──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく!

 『鎌倉殿の13人』が次で最終回を迎えるというのが、まったく信じられない視聴者の一人です。大河ドラマの最終回といえば、すでに物語の中心は主人公の子どもや孫の話に移っており、老けメイクの主人公が病床でこれまでを振り返る……という印象が強いのですが、『鎌倉殿』は「予測不能エンターテインメント!」というキャッチコピーのとおり、その幕をどうやって下ろすのか見当もつかない状況で最終話に突入するようです。

 前回・第47回「ある朝敵、ある演説」では、北条政子(小池栄子さん)が御家人たちに「鎌倉が守られるのならば命を捨てようとこの人(義時)は言った。あなたたちのために犠牲になろうと決めた」「ここで皆さんに聞きたいの。あなた方は本当にそれでよいのですか」と自らの言葉で語りかけ、「向こうはあなたたちが戦を避けるために執権の首を差し出すと思ってる。ばかにするな。そんな卑怯者はこの坂東には一人もいない! そのことを上皇様に教えてやりましょう!」と訴えるシーンが印象深かったですね。毅然とした表情ながら、目をうるませた政子は、これまでの中でもっとも美しく見えるように撮影されていた気もします。脚本の三谷幸喜氏の考える「ヒロインとしての政子」の像は、ここにおいて極まった感がありました。

 最終回を目前として、北条義時(小栗旬さん)の心境の意外な変化も興味深かったです。後鳥羽上皇(尾上松也さん)によって義時追討を命じた院宣が出されたことを知った彼は、それを嘆くでもなく、むしろ誇らしそうに、かつては「伊豆の片田舎の小さな豪族の次男坊」でしかなかった自分が、平清盛や源義経、頼朝と肩を並べる存在になったとした上で、上皇とは戦わず、自身が京都に出頭し、首を差し出すことで事を収めようとしていました。

 今回は『鎌倉殿』最終回の山場となるであろう「承久の乱」の前後の大きな動きについてお話したいと思います。