◆胎内記憶の有名医師を招聘
「現地の集いでは、胎内記憶を広めている産婦人科医の池川明先生をわざわざインドネシアに招いたイベントなんかもありましたよ。ホテルの一室で胎内記憶の映画を上映して、トークセッションみたいのをやるんです」
胎内記憶とは、本来は胎児がお腹にいたときの記憶だが、いま日本で広められているのは「空の上から子どもがお母さんを選んで生まれてくる」というスピリチュアル色の強いものになっている。もともと自然派はスピリチュアルと親和性が高い部分があるが、さらに池川明医師の場合は、日用品の化学物質を危険視する「経皮毒」という思想を支持する医師でもあるので、自然派の支持者を一定数獲得している。一般的とは言い難い考えも柔軟に受け止めてくれる医師だという見方もできるが、個人的には違和感しか持てない。
「駐在先はあまり医療も充実していませんでしたから、日本の産婦人科医が来てくれるとなれば、それだけで参加したがるお母さんも多かったんじゃないでしょうか。スピリチュアルや自然派育児に興味ない現地の日本人の知り合いも、都合がつかなかったけど行きたかった~なんて言ってました。私? もちろん参加しましたよ(笑)。胎内記憶については、子どもがファンタジーなことを言っているのがかわいいな程度の感想で、そこに絆や子育ての意義を感じるまでには至りませんでしたが」
ただし、経皮毒のほうはどっぷり信じていたという。紙おむつは化学物質でできているから、股の粘膜から有害な成分が吸収される。水分を吸う高分子ポリマーは尿を吸収すると冷えピタと同じような状態になり、体を冷やすという説を。
「だからおむつは基本、布。外出時だけ市販の使い捨て紙おむつを使っていました。ちなみに周りの自然派ママたちは、布おむつは濡れると赤ちゃんが気持ち悪がるから、早くはずれるメリットがあるなんて言っていましたが、うちの場合はごく平均的な時期に外れました。使わなくなった布おむつは、掃除に役立ったことだけがメリットかな」
◆芝生の上なら好きに排泄させていい!?
子どもの排泄ケアの中には「おむつなし育児」というものもある。おむつの中で排泄させず、子どもが催すタイミングを親が察し、おまるにつれて行くというものだ。提唱者たちによると、新生児でも可能だという。それが子どもにとって適切かどうかは横に置いておき、筆者は正直趣味の領域だと思っているが、Mさんの周囲ではそこから派生した「おまるピクニック」の光景も見られたという。
おまるピクニックとは何か。おむつなし育児はタイミングを誤ると、排泄物が床に垂れ流しになってしまうことにハードルを感じる人が多い。そこで「芝生の上ならお漏らししちゃっても大丈夫!」と呼びかけ、おむつなし育児を体験しながら情報交換しようというピクニックが2019年頃に開催されていたのだ。排泄物をキャッチするためのおまるを持参するので、おまるピクニック。当時の「おむつなし育児研究所のHP」では「家ではなかなか出来ないお股解放タイムも、この機会にやってみてはどうでしょう♪」と呼びかけられていた。公園で下半身丸出しで遊ばせたり、参加者がおまるにまたがる子どもの写真をSNSにアップしたりすることから、衛生面や子どもの人権の観点から非難の声があがっていた。