◆公開されるのは怖いし、不安です
──映画公開発表の際に「この作品を語るに足る言葉がみつかりません」とコメントしていました。本作の公開が迫ってきた今の心境はいかがですか?(※インタビューは公開前)
松本:公開されるのはやっぱり怖いし、不安です。あのコメントは本当にそのままの気持ちです。それを正直に書くことが、この作品に対する自分のせめてもの誠意だと思いました。
「すごくいい映画です。ぜひ観てください……」みたいな宣伝文句が、この作品に対して相応しいものなのかと。これを取材で言ってしまっていいのかという葛藤はすごくありました。ここに来るまでも悩んでいましたが……言っちゃいましたね(笑)。
◆役を演じることで新しい価値観を体感できた
──今のお話もそうですが、松本さんは言葉に誠実に向き合っている印象があります。SNSの投稿に数時間かけることもあるとお聞きしました。
松本:そうですね。SNSの投稿に5時間かかったりとかしょっちゅうです。それがWebニュースで「松本まりかが“病みツイート”を深夜に連投」と取り上げられることも……(笑)。
本作のコメントも、ものすごく時間がかかりました。いろいろなものを書いて「違う」「これも違う」「どうしたらいいんだ」と悩んで……。この作品をやるまでは裕子と慎一(山田裕貴)の関係が理解できませんでした。私は2人のように曖昧な関係はあまりに不安で、きっと耐えられない。私自身は関係ははっきりさせたいと思うタイプ。だから最初は裕子の感性を理解していくのに時間がかかった。
でも演じるためには、裕子の感性を知らなければならない。文字で読んで、想像して、そして演じると、ラブシーンを含めて、「これが救いなんだ、幸せなんだ」と新たな発見がありました。自分の実生活だったら無理かもしれないけど、役を演じることで新しい価値観を否応なく体感できた。行き詰まっていた私に、突破口を与えてくれた作品です。