足利事件だけでなく飯塚事件もモチーフ?

 佐野亜裕美プロデューサーによれば、この第6話までで「前半戦」だという。浅川は『ニュース8』のキャスターに復活し、斎藤は大洋テレビを辞めて大門のもとへ。残り4話の「後半戦」では対立していくことになるであろう2人。「君は俺を憎むことになるだろう」という斎藤の言葉は、すぐに現実のものとなるかもしれない。

 第6話ラストでは、大門副総理が何らかの形で八頭尾山連続殺人事件に関与しているらしいことが示唆された。事件の舞台となった八飛市の有力者であるという本城建託、浅川が以前に出会った、本城建託の御曹司だとみられる謎の男(永山瑛太)、そして本城建託と大門の関係。「後半戦」はここが焦点となってくるのだろう。

 八飛市は大門副総理の地元だった――という設定から想起されるのは、大門のモデルと見られる麻生太郎氏の出身地・福岡県飯塚市で起きた「飯塚事件」だ。1992年に行方不明の2人の女児が八丁峠で遺体で発見された事件であり、事件から2年後に逮捕された男性は一貫して無罪を主張していたものの、2006年に最高裁で死刑判決が確定。2008年、麻生氏が総理大臣に就任したおよそ1カ月後に死刑が執行された。翌年、男性の妻が再審請求を申し立てるも、2021年4月に棄却が確定したが、新たな証拠があるとして同年9月に二度目の再審請求申し立てが行われている。

 『エルピス』で参考文献としてクレジットされている9冊は、冤罪事件として有名な「足利事件」のものが大半を占めている。確かに劇中の「八頭尾山連続殺人事件」は、逮捕された男性が自白を強要されたり、冤罪の可能性を指摘する報道があった直後に再審請求が棄却されたなど、足利事件を参照したと見られる要素が散見される。一方で、「西の飯塚、東の足利」という呼称もあるほど、両事件にはDNA型鑑定の手法、鑑定技官が同じという共通項があり、『エルピス』が飯塚事件を意識している面も少なからずあるのではないか。参考資料のひとつ、『21世紀の再審 えん罪被害者の速やかな救済のために』(日本評論社)には、飯塚事件の項もある。現場付近での目撃証言が争点となりそうな部分も、飯塚事件を想起させるところがある。また飯塚市は、「九州の帝王」とも呼ばれる麻生グループの力が強いともいわれている。

 もし『エルピス』が飯塚事件もモチーフとしており、ドラマの中で大門が総理になる日が来たとしたら……。『エルピス』のエンディング映像に出てくるケーキの箱には消費期限として「22.10.24」の文字があり、『エルピス』の初回放送日である2022年10月24日のことを指すものと思われていたが、飯塚事件で森英介法務大臣が死刑執行を命令した日が(2008年)10月24日であることは、ただの偶然なのだろうか。『エルピス』の「後半戦」、ますます目が離せない展開となりそうだ。

■番組情報
月曜ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』
フジテレビ系毎週月曜22時~
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原 善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平 ほか
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデュース:佐野亜裕美、稲垣 護(クリエイティブプロデュース)
演出:大根 仁、下田彦太、二宮孝平、北野 隆
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作・著作:カンテレ
公式サイト:ktv.jp/elpis


提供・日刊サイゾー

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