浅川と斎藤、「相剋の関係」になってしまった2人の決別

 10年以上前に起こった八頭尾山連続殺人事件で容疑者として逮捕され、死刑判決が下された松本(片岡正二郎)に冤罪の可能性があると調査し始めた浅川と岸本。浅川が出演している深夜バラエティ番組『フライデーボンボン』で取材VTRを“強行突破”で放送させた浅川は、プロデューサーに叱責されるも、想定以上の反響を呼び、気をよくした局長からの後押しによってシリーズ化することになった。しかし、第2弾の放送後、松本死刑囚の再審要求が突如、棄却されるという不可解な動きが起こる。自分たちの報道のせいではないかと思い悩み、さらに復縁しつつあった斎藤も放送を止めようとしていたことを知った浅川は、打ちのめされ、取材続行を諦めてしまう。一方、諦めきれない岸本は粘り強く取材を続け、松本死刑囚の逮捕の決め手となった目撃証言が、偽証の可能性が高いという新証言を得た。岸本は浅川に倣って『フライデーボンボン』で強引に放送しようとするが、これはチーフプロデューサーの村井(岡部たかし)に見破られてしまう。しかしVTRをチェックした村井と浅川は、その内容に衝撃を受ける。岸本が掴んだ新証言は、まさに死刑判決すら覆しかねない「一発逆転のすごいネタ」だったのだ。

 11月28日に放送された第6話は、チーフプロデューサーの村井、プロデューサー・名越(近藤公園)らに呼び出されるところから始まった。事なかれ主義の名越でさえ、岸本がカメラに収めた新証言の重大性を認識し、浅川とともに「(バラエティではなく)報道に任せたほうがいい」と主張するが、なぜか村井は『フライデーボンボン』での放送にこだわった。ほぼ村井の独断で、報道部に一切何も知らせず、『フライデーボンボン』で冒頭から25分の大特集を組むことに。世間を揺るがす大スクープは、局内のほとんど誰にも事前に知らされることなくオンエアされた。

 局の上層部は深夜の『フライデーボンボン』など誰も見ていなかったが、反響はこれまでの比ではなかった。翌日夜にはネットメディアなどだけでなく、他局の番組やラジオ、さらには新聞まで「ほぼすべての媒体」がこのスクープを取り上げ、世間は冤罪問題一色に。

 だが、スクープを放った高揚感はすぐに消え失せる。松本死刑囚逮捕の決め手となった目撃証言がウソだと暴露された西澤(世志男)は姿を消し、行方をくらませる。松本死刑囚の弁護を担当している木村(六角精児)は、重要な参考人が消えたことで再捜査の目が消えたと浅川に告げ、なぜ事前に相談してくれなかったのかと怒りをぶつける。また、西澤の目撃証言が虚偽であると証言した元妻の身柄こそ保護はしていたが、子どもたちのもとにマスコミが殺到し、一家は困惑。浅川たちは、いかに自分たちの行動が甘かったかを思い知らされたのだった。

 局内の混乱も大きかった。緊急幹部会議が行われ、10年続いた『フライデーボンボン』は「世間を騒がせたことのけじめ」として放送打ち切り。新たに『ウィークエンドポンポン』へとリニューアルすることになり、大半のスタッフはそのままだったが、チーフプロデューサーの村井は降ろされ、関連子会社へと異動。岸本も経理部へと異動させられた。官邸キャップである斎藤はおり、実は大洋テレビには、大門副総理に可愛がられている報道部のエース・斎藤(鈴木亮平)を通じて、圧力がかかっていた。村井はそれを知っていたから、報道部にスクープを渡さず、『フライデーボンボン』で放送することにこだわったのだった。大門の“要請”を無視した格好の大洋テレビは、“問題児”の粛清に踏み切るしかなかった。

 だが浅川は、大洋テレビの看板報道番組『ニュース8』に事件を取材した記者として急きょ出演することに。メンツをつぶされた格好の報道部だったが、世間が大騒ぎしているなか、当の大洋テレビの報道番組が無視をするわけにはいかないためだ。『ニュース8』はかつて浅川がサブキャスターを務め、斎藤との路上キスがスクープされたことをきっかけに降板させられた因縁の番組だった。

 そして、図らずも世間からの評価が急上昇した浅川は、自分が過去に目指していた「信頼されるキャスター」として認知されるようになり、なんと『ニュース8』にメインキャスターとして復帰する。だがその裏で、一度はよりを戻した斎藤とはふたたび別れることに。『ニュース8』に事件記者として久々に出演することになった直前、浅川は何度も斎藤に連絡を取ろうとしたが、連絡が取れない。代わって、斎藤から「ここまでにしよう」と別れのLINEが届く。報道の可能性を信じて突き進む浅川と、その報道に圧力をかけようとする政治家側に立つ斎藤とでは、もはや埋められない溝があった。「近い将来、君は俺を憎むことになるだろう。それでも、そういう君をこそ、俺は好きだった」。ようやく斎藤がはっきりと浅川への思いを示したが、それは2人の別れが決まったあとのことだった。斎藤は大洋テレビを辞め、大門副総理のもとへ行く。

 別々の道を進んだのは浅川と斎藤だけではなかった。岸本は経理部に飛ばされてからも取材を続行していたが、局の看板番組でメインキャスターを務める浅川は多忙を極め、岸本の話にろくに耳を傾けない。だが岸本から送られた写真をきっかけに、事件のあった八飛市が大門副総理の出身地だったことに浅川は気づく。引っかかるものを感じた浅川は首都新聞の記者・笹川(池津祥子)に、大門副総理について調べてもらうよう依頼するのだった。