◆マジカルなシンガーの姿
本公演のハイライトは、やっぱり朗読劇が織り込まれていたことだろうか。残りの公演を楽しみにしていただきたいので詳述はさけるが、こういうインタールード的な演出をむしろ全体の目玉としてみせてしまうのが、岩田剛典を岩田剛典たらしめる自由なスタイルの所以だろう。
朗読劇をうまく挟み込みながら、ミッドナンバー「Distance」とバラードナンバー「言えない」を披露するあたり、心憎いばかりに完璧で、非の打ち所がない。ステージ上の2階スペースでスツールに座る岩田が本を広げて、朗読する。そのままの流れで曲に入り、タイミングよく階段を降りてステージへ。今度は下手のベンチに腰を下ろして、朗読の続きをする。
朗読の声といい、ステージ上での動き方といい、いやあ~、役者だなあ、と思った。役者の基本は舞台上にある動線上を移動することにある。下手から上手へ、上手から下手へ、さらに奥から手前へ。ステージ上を最大限活かしながら、パフォーマンスを完全にコントロールしている。ソロ1年目にして、岩ちゃんは、紛れもなくマジカルなシンガーの姿だった。
<取材・文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu