何重にも築かれた心理的な壁

米10年債利回り3%の壁は、突破されればすぐに株価が下落することが保証されている数値ではない。そのため、「市場リスク」というよりは「市場の潜在的リスク」と言った方が正確かも知れない。
今回の局面で市場は3%ピッタリではなく、3.0516%を注視している。これは、前回に米10年債利回りが3%を超えた2014年1月2日の数字だ。これが突破されると、次の抵抗線は2010年から2011年はじめにかけて記録された3.14%や3.15%へと上がり、そこからは3.215%と3.25%など、多くの「節目」となる心理的な壁が控えていると、米中堅証券会社スタイフェル・ニコラウスの元国債部長であったマーティ・ミッチェル氏は語る。

また、米10年債利回りはただ上昇するのではなく、下方への揺り戻しがあるだろうと、ミッチェル氏は付け加える。このため、株価がどのように反応するかは未知数であり、たとえ3.05%の壁が3月に崩れても、即「市場リスク」にはならないのである。

その上でミッチェル氏は、「長期的に米10年債利回りが上昇していく傾向は止まらないだろう。そして、米10年債利回りが上がり続ければ、株が売られる」とする。

本当に注視すべきは3.5%か4%か

米10年債利回りが3.05%の壁を突破しても、すぐに株価下落のリスクにならないのであれば、本当に「危ない」レベルはどのあたりなのだろうか。

クレディスイスのチーフ証券ストラテジストであるジョナサン・ゴラブ氏は、「3.5%こそ、注視すべき壁だ」と言う。

一方、米ファンドストラット・グローバルアドバイザーのパートナーであるトム・リー氏は、「投資家は米10年債利回りが3%の壁を突破することを怖れているが、株式市場が真の意味で下落を始めるのは4%だ」とする。

その理由は、米10年債利回りが4%を超えれば、株価収益率に圧力がかかるからだと、リー氏は解説する。

逆に、3%超えはまだ「グレーゾーン」に過ぎないわけだ。リー氏は、「事実、1950年代と1960年代には、米10年債利回りが4%未満に留まる限り、金利の上昇は株価の上昇につながった」と指摘し、「米10年債利回り上昇による、3月の市場リスクの高まり」が必ずしも実現するとは限らないことを示唆する。

加えて、現在の利回りは著名投資家ジェフリー・ガンドラック氏や仏ソシエテ・ジェネラルが「株式市場に悪影響がある」と指摘した2.6%台の数値を既に上回り、米ゴールドマン・サックスと米JPモルガンが指摘している警報値の2.75%も超えているが、株価の下落は2月27日だけを見れば1%台と限定的である。

また、米消費者物価の上昇がFRBの2%目標に限りなく近づかない限り、米10年債利回りは3%に到達できないだろうとの見方もある。
このように、米国で3月に想定しておきたいリスクとして米10年債利回りの3%突破が多くの市場関係者によって挙げられているものの、そのリスクは未知数であり、重大性も絶対的なものとは見られていない。

米10年債利回りの上昇に対しては警戒を怠るべきではないが、すぐに株式市場の先行きを悲観するような性格のものでもないというのが、市場関係者の多数派の意見のようだ。

文・岩田太郎(在米ジャーナリスト )/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
お金が貯まる5つのコツ。「貯蓄1,000万円」も夢じゃない
「いつもお金がない人」に共通する5つの行動と口ぐせとは?
お金持ちの「貯まる特徴」3つ 最も大切なのは?
お金を増やしたい人へ。専門家がおすすめするベスト3の方法とは?
お金を貯めたいなら財布選びで意識したい「風水」