◆色男の系譜
R&Bには、色男の系譜というものがある。楽曲の特徴としても、歌い手の外見的な色っぽい雰囲気が重要なエレメントになるのだ。80代にしてまだまだ現役の「アリズレー・ブラザーズ」のリード・ヴォーカル、ロナルド・アイズレーなんてまさにその代表例だが、その系譜に連ねていいくらい、隆二さんの色気といったら、これはもうね、折り紙付きの超一級品。
そこにいるだけで、色気があって美しいたたずまいは、それだけですでに才能である。今市の全身から発散される色気をひとたび吸い込むと、こちらは桃色のため息を吐き出してしまいそうになる。そんな調子でライブステージに立たれたら、あまりの色っぽさに困ってしまうではないかと、筆者は思った。
というわけで、ここまで今市隆二というR&Bシンガーを深く理解するために、R&Bマナーについて丁寧に筆を運んできた。それは、愛すべきR&Bへのストレートなリスペクト表明、ファンへの感謝を伝えるホールツアー『~Rock With You~』で浮かび上がる色っぽい音像を実際に体感する補助線になることと思う。
◆「R&B」と「Rock」の邂逅
筆者が参戦したのは、『RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 “RILY’S NIGHT”』の第2章『~Rock With You~』東京公演(11月14日)だ。「Rock With You」という付随タイトルが気になっていたのだが、アリーナ席の入口扉をくぐり抜けてはたと気づく。いまさらかと鈍い頭の自分にツッコミを入れつつ、それはマイケル・ジャクソンへのリスペクトと愛着だったのだ。
三代目JSBのツインヴォーカルながら、ダンス技術に定評のある今市だ。マイケルへのストレートなリスペクトをはばからない開演前の会場では、BGMとしてマイケルのヒットパレード。まず文字通りのヒットナンバー「Rock With You」が耳に入る。この曲は、マイケルの5枚目のアルバム『Off The Wall』(1979年)からシングルカットされた。
曲名は、「君と踊りたい」くらいの意味だが、ファンと一緒に身も心もひとつにして、ビートに揺らそうとする隆二さんの心憎いくらいのコンセプトを感じる。第2章開催直前にリリースした『GOOD OLD FUTURE』を引っ提げることで、前章にはまだ息を潜めていたR&Bフレイヴァーを辺り構わずに振りまきながら、ダンスグルーヴの渦の中で「Rock」との邂逅を果たした。