私が敬愛する慈善活動家の故・佐藤初女先生は、手料理を通じて悩める人に寄り添っておられました。青森・岩木山麓で先生が運営しておられた「森のイスキア」には、全国各地から先生を慕う人が訪問されています。先生に苦しい胸の内を明かし、心のこもった手料理を頂き、再び生きるちからを得た人は多数おられたそうです。先生は、そのような方々の話をただただ聞くことに専念しておられ、助言は一切なさいませんでした。「答えはおのずとその人の中から出てくる」というのが先生のお考えだったのです。

私の恩師や友人に、「人の話を聴くこと」が非常に素晴らしい方がおられます。「聴」の漢字の右側は「徳」と同じであり、「聴」は「徳をもって耳を傾ける」、つまり、「徳のある人は、他者の話をよく聴く」という意味です。こちらの話だけで白黒の判断をしない、尋ねられない限り自分の体験談をしない、ただただ目を見て頷きじっくりと聴く。そのようなことが自然とできる方々に、私は随分支えられてきました。

悩みを抱えている人に対して「何かをして差し上げたい」というのは貴いことです。でも、それも踏み込み過ぎるとかえって相手にとっての重荷や押しつけになりかねません。私自身、これまでの学習相談から多くのことに気づかされ、どのようにすれば学びのきっかけを感じていただけるか試行錯誤を続けています。

ベストな方法は結局のところ、寄り添いの心で「見守ること」なのでしょうね。

(2022年11月8日)


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