ヒトの感情に麻痺してしまった、ノゾミ

(写真=getty images®)

私が知る中で、一番したたかで頭の良く、誰よりも悲しい女だと感じた女性だ。私たちが知り合った頃には、彼女はすでに結婚していた。随分早くに結婚を経験していたから、6~7年は旦那と2人で、平和に暮らしてきたんだろう。ある時、彼女は、真面目だと思っていた旦那が浮気していることを知る。彼の携帯に、浮気相手からの決定的なメールがあることを発見するのだ。それは、彼女も見覚えのある名前だったらしい。離婚を考えていなかった彼女は、最初は見て見ぬふりを続けようと頑張ろうと思った。けれど、いつしか自分も仕返しをするかのように、外で遊び歩くようになったのだ。

私が知っている中では、旦那の他に、彼氏と、定期的にお金をくれるパパもいた。そこに愛があったのかはわからない。旦那も、自分も。不倫という、スリルをただ楽しんでいたのかもしれない。いつしか、旦那が原因で始めた男遊びに、どんどんのめり込み、華やかな毎日を送るようになった。

彼女のしたたかさを実感したのは、自分の浮気は一切匂わせないところ、旦那と浮気相手の"証拠"になるものを徹底的にかき集めたところだ。案の定、彼女はパパにもらったお金と人脈で、優秀な弁護士を雇った。そして旦那と旦那の浮気相手から、多額の慰謝料をふんだくってお別れしたのだ。きっと、旦那のことは本当に愛していたことだろう。執着、嫉妬。彼女を変えたきっかけはあまりにも残酷だった。W不倫、というには足りないくらいの行動を起こしたノゾミ。彼女はお酒と男に依存するようになり、友人だけでなく社会的信用を失った。

奪いつくす愛

(写真=getty images®)

全員、どこかで「このままじゃいけない」と感じるタイミングはあったはずだ。けれど、結局は泥沼にはまるかのようにどんどんと足場を奪われていく。

冒頭に書いた『2番目は全部知ってる』という言葉は、ここで最後に紹介したノゾミが放った言葉だ。旦那の浮気相手は、彼女も良く知る人物…長年彼女に憧れを持っていた元友人でもあった。彼女が大事にしている旦那と関係を持つことで、優越感を得たかったのかもしれない。

『2番目は全部知ってる、旦那のことも、私のことも。私たちの状況も。だからきっと居心地が良いの』そう言って、タバコに火をつける女の姿は、とても痛々しかった。優越感を感じたかもしれない、彼女もきっと、お金以外の何かを失ったはずだ。さて。不倫が与えるは一体なんだろう。

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