わずかな貯金で、何も支援を受けられない女性も
――今回の相談会で、松元さんが衝撃を受けた事例はありますか?
松元「コロナ禍が継続して福祉制度の狭間にいる女性が存在していることです。 ある女性は、DVが原因で離婚をしましたが、離婚時の財産分与で少しの貯金と手に職もありました。けれども、コロナ禍になって失業し、登録型の日雇い派遣の仕事をしていましたが、それもなくなりました。 DVで精神を病んでいるので、障がい者年金をもらってはいますが、それは家賃に消えていく。家賃以外の食費や光熱費、あと月5万円ほど稼ぐことが彼女の課題になっていました。貯金も100万円を切っていましたが、預貯金は世帯の最低生活費の半分以上あると生活保護は申請できないんです。
結局、家賃を削るしかないという結論にいたりましたが、ご本人もすでに都営住宅などの抽選に何度も応募されているんですが当たらず。相談員の私たちもどうすればよいかわららなくて、一緒に頭を抱えました。会場にある支給品をできるだけ持って帰ってもらうしかないかと想っていたんですが、ご本人は『こんなに親切にしてもらったのは初めて』だと言って喜んでいました。 コロナ禍が長期化しているせいで、あらゆる制度を利用しても困窮状態から抜け出せなかったり、生活保護を受けられない女性もいるんです」
「あなたの責任ではない」と知ってほしい
――活動家ではない私たちが女性の貧困を改善するために、何ができると思いますか?
松元「一番重要なのは、意識改革だと思います。簡単なことではないですが、生活困窮している人には『自分たちのせいでこうなったわけではない』と意識してほしいし、彼女たちの責任を追及する人にも立ち止まって考えてほしいです。暴力を受けたのも、貧困に陥ったのも、すべてが自分の責任ではないことを自覚して、誰かに相談して支援を求めてほしいです。これは誰に対しても言えることです。
私たちは何でも自己責任だと思わされているし、そういう考えに慣らされてしまっている。もし、なんでも自分の責任だと信じると、他者への眼差しも厳しくなってしまいがちですよね。そのため、社会に問題提起をしなければいけないときに、声がひとつになりづらい。 自己責任ではなく、国が社会をよりよくし市民の命と生活を守るために、政策を変えていかなくてはならないのだ、という方向へ意識を向けることが必要です。私たちは、憲法25条で基本的生活を保障されているのだから、国には私たちの生活を保護する義務があることを皆さんに認識してほしい」