「お酒は20歳になってから」というものの、20歳を過ぎてもお酒が飲めないという人もいます。社会人になると仕事関係の飲み会も増え、お酒が飲めないことのデメリットを感じてしまう人もいるでしょう。しかし、無理な飲酒は禁物です。そもそもお酒が飲める・飲めないとはどのような体質のことなのか、そのメカニズムについて調べてみました。

そもそもお酒に強い・弱いとは?

「あの人はいくらお酒を飲んでも酔わないから強い」とか「一口でもお酒を飲むと顔が真っ赤になってしまうから弱い」とか、私たちは普段そういった表現を使います。では、具体的にお酒に強い・弱いとはどのような体質を指すのでしょう。

アルコールを飲むと、胃で20%、小腸で80%が吸収され、その大半は肝臓で分解されると言われています。肝臓の働きによってアルコールは段階を経て分解され、最終的には水と二酸化炭素になり、尿や汗として体外へと排出されます。

これが、アルコールを分解する人間の身体の仕組みです。お酒の飲み過ぎは肝臓に影響を与えるとよく言われますが、このようにアルコールに対して重要な役割を持つ臓器が肝臓なのです。

アセトアルデヒドとは?

肝臓でアルコールが分解される際に発生する物質の中に「アセトアルデヒド」というものがあります。実はこの物質がお酒に強い体質・弱い体質に関係しています。アセトアルデヒドは毒性が強く、体内で発生すると皮膚の紅潮や、頭痛や吐き気といった症状を引き起こすと言われています。

肝臓の中では、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)という物質の働きによってアセトアルデヒドが分解されていきます。このときに、アセトアルデヒドを分解する能力が強い人ほどお酒が強く、分解する能力が弱い人ほどお酒が弱いということになります。

また、日本人はアセトアルデヒドを分解する酵素の働き方によって、「お酒が強い人」「お酒は飲めるけれど弱い人」「お酒が飲めない人」に3分類されると言われ、約4%の日本人は「お酒が飲めない人」に当てはまるそうです。

お酒が弱いのは生まれたときから決まっている!?

お酒に対する強さは自由にコントロールできるものではありません。アセトアルデヒドを分解する力は遺伝によって受け継がれ、先天的に決まっているのです。努力をすればこの体質が変わるわけではないため「飲み続ければお酒が強くなる」という俗説も誤りです。

特にモンゴロイド系の人種はアセトアルデヒドを分解するALDH2の活性が弱く、お酒が飲めない「不活性型」の人が多いということが明らかになっています。モンゴロイドの中に突然変異でALDH2の活性をなくした人が出現し、時代と共にその遺伝子を持った人が増えていったのだとか。

これは、ヨーロッパやアフリカ系の人種には見られない特徴であり、モンゴロイド系である日本人は欧米の人々と比較してお酒に弱い人が多いと言えるのです。

お酒が弱いことに体重や男女差も関係ある!?

お酒に対する強さは、遺伝以外に、性別や年齢、体重などによっても変わってくると言われています。それぞれ解説していきましょう。

性別

一般的に、女性は男性に比べてお酒が弱い人が多いと言われています。また、飲酒量が少量でも女性のほうが短期間でアルコール依存症になりやすいことも分かっています。これには女性の身体的な特徴が関係しているようです。

女性の肝臓は男性と比較して小さいため、アルコールを分解するスピードが遅く、男性よりも長い時間が必要になります。さらに、女性は男性と比べて体脂肪が多く水分量が少ないことから、血液中のアルコール濃度が高くなりやすいのです。

そのため肝臓への負担が大きくなり、アルコールによるさまざまな影響が出やすいと言われています。肝臓障害を引き起こすリスクも高いため、飲み過ぎには十分注意しましょう。

年齢

年齢もお酒に対する強さに関係があると言われています。日本で20歳未満の人の飲酒が法律で禁じられているのは周知の事実ですが、その理由の1つとして大人に比べてアルコールの分解能力が低いということが挙げられます。

脳細胞や臓器の発達にも悪影響を及ぼすため、20歳未満では飲酒が禁じられて然るべきと言えるでしょう。一方、加齢に伴いアルコールの分解機能が衰えていくことも分かっています。

若い頃に比べて体内の水分量が減ることも重なり、血中アルコール濃度が上昇しやすくなります。年齢を重ね、少しお酒を飲んだだけで酔いやすくなってしまったということも珍しくありません。

体重

お酒を飲むとアルコールが血液を介して全身に広がっていきます。体重の重い人は軽い人に比べて全身の水分量や血液量が多いため、血中アルコール濃度が高くなりにくいと言われています。つまり、体重の重い人のほうがお酒が強いということです。

もちろん個人差はあるので、適量を超えて飲酒をするのは避けましょう。

今は飲めるけど……30年後は違うかも

お酒に対する強さが年齢と関係していることはすでに述べました。若い頃はいくらでもお酒が飲めたのに、年齢を重ねるごとに弱くなってすっかり飲めなくなってしまったということも珍しくないようです。

加齢によって体力が衰えると同時に、アルコールの分解能力も低下していきます。そのため若い頃と同じ量だけ飲酒してしまうと、酔いやすくなり臓器に障害を起こしやすくなります。20代でお酒にも強いという人が、30年後にも同じように飲めるとは限りません。

特にお酒が好きでよく飲む人ほど注意が必要です。年齢に合わせて体質が変化していくのは避けられないことなので、お酒の飲み方もそのときの体質に合わせて変えていったほうがいいでしょう。こまめに健康診断を受け、健康管理をしっかり行いながらお酒を楽しむのが理想的だと言えるでしょう。

また、近年は高齢者のアルコール依存症が増えているとも言われています。定年退職、パートナーや友達との死別をきっかけに孤立感を抱えるようになり、現実から逃げるようにお酒に溺れてしまう人が多いそうです。高齢者のアルコール依存症は、肝臓障害や末梢神経炎なども引き起こします。

ライフステージの変化が訪れても、趣味や楽しみを持ち続けたり社会とのつながりを保ったりすることで、お酒に依存するリスクを減らすことができます。年齢を重ねても楽しくお酒を飲みたいからこそ、真剣に考えていきたい問題です。