【今週の一冊】

「大丈夫、あのブッダも家族に悩んだ」草薙龍瞬著、筑摩書房、2022年

「家族」というのは社会における一つの単位。先日、エリザベス女王の国葬の際、テレビ映像を見ながら、「ロイヤルファミリー」とは一つの「家族」なのだなと思いました。家族とは言え、性格も価値観もそれぞれあります。まとまるときもあれば、亀裂が生じてしまうこともある。それが家族なのだと思います。

今回ご紹介する一冊は、僧侶の草薙氏が記したもので、仏教の観点から家族問題を解説しています。氏が述べる通り、本来家族というのは「みんなが平穏に暮らせること」「なるべく楽しく、少なくとも険悪にならずに」(p3)共存するものでしょう。しかし、「家族だから」という甘えがゆえに相手を傷つけることもあります。するとそれを被った方は「家族だから」耐えねばとの呪縛に苦しみます。

親子間における難しさ。それは、親世代自体の抱える問題が未解決であることが大半です。親が自分自身の問題(仏教では「業(ごう)」)に勇気をもって向き合えば、そこから親自身が学び、新たな人生を歩めます。しかし諦めたり開き直ったり、あるいはそうした課題を認めず意固地になると、その業は子ども世代に伝わってしまうのです。そして親からの刷り込みに子は悩み苦しみます。

目次には「”罪悪感”を捨てる」「親への“妄想”を捨てる」など、具体的な方法が出ています。とりわけ大事なのは、子どもである本人が傷ついた心を癒し、そこから歩むこと。親に愛されたいと思ってもそれが叶わないのであれば、悲しいですがどこかであきらめなければなりません。でも、あきらめることは敗北ではないのです。

たとえ親に振り向いてもらえなくても、たとえ自分が傷ついたとしても、どこか別の所で本当の愛を知り、その愛を「いつからでも育てることができる」(p214)と著者は説きます。励まされる一冊です。


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