田舎暮らしでは環境や生活様式が都会とは大きく異なる部分も多く、不便だと言う声は少なくありません。都会と比べて具体的にどのような部分が不便と言われるのか、また快適な田舎暮らしを送るために移住前に準備したいことを解説します。

都会とは真逆?田舎暮らしはここが不便!

田舎暮らしはここが不便!都会とは全く違う生活様式や移住前に準備すべきことも解説
(画像=『移住したい』より引用)

憧れる人も多い田舎暮らし。しかし、都会では味わえない魅力と同時に、都会にはない不便な部分があることも事実です。田舎暮らしの経験がある人からは、田舎の不便な点としてさまざまな例が挙げられます。内閣府による世論調査の結果も参考にしながら見ていきましょう。

出典:内閣府 令和2年度「地域社会の暮らしに関する世論調査」

電車やバスが1時間に1本もない場所もある

都市部以外の地域では、電車・バスといった公共交通機関の便数が少ない傾向にあります。なかには1時間に1本も通らない路線もあり、普段の生活の足とするには不便と言わざるを得ないでしょう。数分おきに満員電車が来るような首都圏と比べるとギャップが大きいですね。
公共交通機関の少なさは、田舎暮らしで自家用車が必須と言われる要因のひとつです。自分で運転しない人にとっては、日々の暮らしで移動に不便を感じる場面は多いでしょう。

また、地方では公共交通機関がさらに減少しているところもあります。
前述の世論調査において「地域における将来の生活環境に対する不安なこと」を尋ねた項目で、「公共交通機関の減少」を挙げた人は人口20万人未満の市町村で30.8%にのぼりました。地方の公共交通機関は経営が厳しいところも多く、利用者の少ない路線は廃止や減便といった決断をせざるを得ない場合もあります。
田舎において、公共交通機関の改善はなかなか難しいと言えるでしょう。

医療機関が少ない

地方では医療機関の不足も深刻な課題です。
前述の世論調査では、「地域における将来の医療機関の利用に対する不安なこと」を調査し、人口20万人未満の市町村と20万人以上の市に分けてレポートされています。結果から一部を抜粋して紹介します。

不安に感じていること 回答した人の割合
(人口20万人未満の市町村)
回答した人の割合
(人口20万人以上の市)
体力の衰えによって通院が大変になること 55.1% 46.4%
公共交通機関の減少によって通院が大変になること 30.9% 15.8%
特にない 19.9% 31.9%

※他の回答については省略しています

出典:内閣府 令和2年度「地域社会の暮らしに関する世論調査」

まず、不安な点が「特にない」と回答した人の割合は、人口20万人未満の市町村で19.9%、20万人以上の市で31.9%と差が見られました。規模の小さい自治体に住む人たちのほうが、医療機関の利用に関する不安がより大きいことが見てとれます。

また、不安に感じる点として、「体力の衰えによって通院が大変になること」「公共交通機関の減少によって通院が大変になること」などが挙げられました。この2つの回答を選択した人の割合は、人口20万人以上よりも人口20万人未満の自治体で高くなっています。人口の少ない地域では医療機関が近くになく、通院に困難が生じていることが窺えます。

田舎だからといって一概には言えませんが、この調査からもわかるように、都会と比べると医療機関が不足している、あるいはアクセスが困難な地域は少なくありません。地方における産科・小児科不足も問題になって久しいですが、なかなか改善にいたらない状況です。

医療環境が整っているかどうかは、安心して生活を送る上で無視できない要素です。若く健康なうちにはあまり気にしていなくても、年齢を重ねて健康に不安が出てきたり、ケガや病気になったりした場合には、受診・通院がしやすいかどうかは生活を左右するでしょう。
事実、上記の調査結果でも、医療機関の利用について不安を感じるという回答は、高齢の回答者ほど高い割合を示しました。医療環境は地方の高齢化とも切り離せない問題と言えます

外食チェーン店や商業施設が少ない

人口の少ない地域ではお店も限られます。都市部では珍しくない外食チェーン店も、田舎だとまったく出店していないことはよくあります。気軽に外食したり、最新メニューをいち早く食べたりしたい人には、少々物足りない環境かもしれません。

例を挙げると、SNSでたびたび話題になるイタリアンレストランチェーン店のサイゼリヤは、実は出店していない県が12県(2022年8月時点)にものぼります。出店戦略には地域性なども考慮されるため、一概に地域人口と比例しているわけではありませんが、やはり都市部と比べると店舗数は少なくなってしまいます。

また、田舎では商業施設が少なく、商品の選択肢が限られてしまったり、必要なものを買うために都市部まで遠出しなければならず手間に思ったりすることもあるでしょう。インターネットショッピングは頼りになりますが、実物を見たり触ったりして選びたい商品の場合は、やはり実店舗のほうが失敗を避けられます。

地域に小売店が少ないと、買い物に不便なだけでなく、価格競争がはたらかないことから店頭価格が高めに維持されがちという側面もあります。

外出先で飲む時は運転代行を頼まないと帰れない

田舎では、公共交通機関の事情から、飲食店や友人宅など外出先での飲酒が気軽にできないという不満の声も聞かれます。自宅や外出先の近くに鉄道やバス路線がない、あっても便数が少なく終電が早いなどです。バスや電車を帰りの交通手段に使えない場合は、家族などに送り迎えを頼むか運転代行業者を呼ぶ必要があります。

運転代行とは、飲酒や体調不良などで運転できないときに、利用者の車を代わりに運転して目的地に送り届けるサービスです。警察庁のデータによると、都道府県別の運転代行業者の数は、沖縄県が突出して高い数字です。移動の基本が自家用車であり、かつ飲酒習慣が高い土地柄から、地域に根付いていることが窺えます。

運転代行は便利なサービスですが、当然ながら費用がかかるため、そう頻繁に利用するわけにはいきません。また、深夜まで営業している飲食店があまりないため、そもそも外でお酒を飲める場所が少ない地域もあるようです。

参考:警察庁令和3年警察白書統計資料