小松菜奈とお似合いだと心から思える理由
小松菜奈も余命わずかで複雑な内面を持つ女性を、これ以上はないほどに演じ切っている。ただ自身の死の運命を冷静に見つめたり、はたまた抗おうともがくだけではなく、「余命10年って笑えるよね。長いんだか短いんだか、どっちなんだって感じ」というセリフに代表されるように、シニカルな視点で自嘲ぎみに笑うような一面もある。
だからこそ、その気持ちと誠実に向き合おうとする、純粋無垢な性格の坂口健太郎演じる青年とお似合いに見えるし、2人の幸せを心から願いたくなる。小松菜奈が全身全霊で体現したかのような、絶望と希望の両方の感情がダイレクトに伝わる熱演にも、期待してほしい。
死への向き合い方の対比
映画『余命10年』では、余命宣告を受けた主人公だけでなく、恋人である青年の心情も鋭く深く描かれている。ドラマで重要なのは、その「対比」、はたまた「共通項」があってこその価値観や感情のぶつかり合いだ。
その対比は、青年が序盤で自殺未遂をしてしまう一連のシーンでありありと描かれる。病院に運ばれ、駆けつけた友人に「生きる意味とか、わかんない」と口にしたことを、主人公から「それって、すごくズルい」と返されるのだ。
主人公は望まずして死に至る病に冒されていて、生き続ける選択肢すら選べない。それにもかかわらず、目の前の青年が自らの意思で死を選ぼうとしていたのだから、もっともな批判だろう。