高齢の女性の裸を見る機会が、お風呂とか銭湯以外にない

――確かに、我々が小さい頃の中年女性はすぐ「もう私なんておばちゃんだから」って言っていた気がします。

田房:40代から50代60代70代になるごとに、第二次性徴期並みに姿が変わっていきますよね。第二次性徴期のことは詳しく教えてくれるけど、第四次変化期とは呼ばないのってへんだなと思います。

海外だとおばあちゃんがビーチで水着で歩いてたりするけど、日本だと自分より高齢の女性の裸を見る機会が、お風呂とか銭湯以外にない。

メディアで見る高齢の女性の体って宮崎美子(※2020年、62歳で水着グラビアを発表)しか見たことないです。40代の私のほうが人に見せられないボディなんですけど…っていう。

スポーツジムのお風呂に入ると、お婆ちゃんたちがいっぱいいるんです。自分より年上の女性の体が自然と視界に入ってきて、じっくり見ることはしないけど、いろいろな体型の人がいてホッとします。それだけでなぜか、自分も年とってもやっていけるなって思えるんですよね。若い頃は銭湯にいってもそんな感覚にはならなかったけど。

――作中でも「この容姿で生まれてここまで来た自分の運命そのものを肯定したい」と書かれていいましたね。非常にいい言葉だなと思いました。『いつになったらキレイになるの?』で特におすすめの回はありますか?

田房:フィメールラッパーの回(4章「11月欧米エンタメにハマる」)ですね。お尻や太ももが大きいことは別に悪いことじゃないって海外の女性アーティストに教えてもらえました。彼女たちの姿を見る前は、全くそういう風に思えなかった。自分で読み返してみても、やっぱりいいなって。

自分のやりたいことをやればいい

――女子SPA!の読者に向けて、メッセージがあればお願いします。

田房:私は30代後半から自分が嫌で嫌で仕方なかったんですけど、そういう時期もあってもよかったなって思ってます。“あの時もっとはっちゃければよかった”ともあんまり思ってなくて。

私にとっては、「お母さんに似るのが嫌だ!」って抗(あらが)うことも人生の一歩だし、それを感じ切るのも、そういう時期だったのかなと思います。無理くり綺麗になろうとしなくていいし、ありのままの自分を好きになりましょうとか自己肯定感を高めましょうとか言われても、できないものはできないから、それはもう放置して(笑)自分のやりたいことをやればいいと思いました。だって無理だし。

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外見に悩み鏡が見られなかった漫画家「安めぐみになりたい自分を受け入れてみた」<漫画>
(画像=『女子SPA!』より引用)

母親、痴漢、男女の格差など、普段やり過ごしていた問題をグッと身近に引き寄せ、「悲しんだり怒ったりしていいんだ」と気づかせてくれる田房永子さんの作品たち。

新刊『いつになったらきれいになれるの?』では、作者が自分の見た目を少しずつ受け入れていく心の動きが丁寧に、コミカルに描かれています。

「私は私の人生や生活を守るために必死で(中略)次に進むために食べてたんだって」「『がんばってたね』って言ってあげてもいいんじゃないかなって思った」(4章「6月安めぐみに目覚める!?」)という田房さん。自分の見た目や体型を受けれられず自己嫌悪に陥っている人たちに寄り添ってくれる本です。

私たちも40代をYOU島で楽しく過ごしましょう。

【田房永子】1978年、東京都生まれ。2001年、アックスマンガ新人賞佳作受賞。過干渉な実母との確執を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版刊)が大きな反響を呼ぶ。著書に『キレる私をやめたい』(竹書房刊)、『大黒柱妻の日常』(エムディエヌコーポレーション刊)、『なぜ親はうるさいのか』(筑摩書房刊)などがある

<文/藍川じゅん>

藍川じゅん
80年生。フリーライター。ハンドルネームは永田王。著作に『女の性欲解消日記』(eロマンス新書)など。


提供・女子SPA!

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