「あ、私の足の色、かわいいじゃん」って思う時があります(笑)

――ひどすぎて笑ってしまう(笑)。作中に「なんだかまるで『正しい体型』というものがあって、『これに近づく努力をしないと死にますよ!』と言われてるみたい」というコマがありましたが、日常的にそういう息苦しさを感じてる女性は多いのではと思いました。 エステで嫌なことを言われてパニックになった自分の気持ちに寄り添うシーンは、非常に田房さんらしい丁寧な描写で、印象的です。本の完成前と後でどんな変化がありましたか?

田房:鏡や写真が以前より平気になりました。見れなくてつらかったし不便だったので、これは本当によかったなあって最近思います。でも自分一人で鏡見てる時と、街のガラスとかに映る自分の姿ってぜんぜん違うんでギョッとするのは常にあります(笑)。でも一人の時に自分の顔を見て「悪くないんじゃない」ってたまにでも思えることで無数の「ギョッ」を乗り越えていけるものなんだなって知りました。

あと、お風呂からあがって足を拭(ふ)いていて「あ、私の足の色、かわいいじゃん」って思う時があります(笑)。セルライトついたまんまだけど、色はいいなって。以前なら、セルライトあるから何もかもダメ、って考え方だったんですよね。でも今は、誰かの足の色と比べてるわけじゃなくて、パっと目に入って「かわいい」と思った自分の感覚をそのまま受け取れるようになった、って感じです。

自分に対する変化と連動してるのか、人がおめかししているとうれしくなって「すてき!」とか「かわいいね」とか口に出して言っちゃうようにもなりました。

外見に悩み鏡が見られなかった漫画家「安めぐみになりたい自分を受け入れてみた」<漫画>
(画像=『女子SPA!』より引用)

イカダで漂流していた自分が「YOU島」にたどり着けました

――書下ろしエッセイ(4章「5月ひどい落ち込み」)の「『私は太っている』という事実に向き合ったら、安めぐみになりたくなった」いう流れが、いきなり過ぎて爆笑しました(笑)

田房:「今の私は、どういう姿になりたいのか?」って自分に尋ねたら安めぐみさんがボンと浮かんできました。そうですね、自分でも急すぎて「どうした?」って感じでした(笑)。

でも、なれるかなれないかは別として、「安めぐみさんになりたい」という自分の訴えをひとまず受け入れる、という繰り返しが「鏡を見れるようになった」につながったのかなと思います。

外見に悩み鏡が見られなかった漫画家「安めぐみになりたい自分を受け入れてみた」<漫画>
(画像=『女子SPA!』より引用)

――こういう人になりたいという具体的なイメージが沸くのは、前向きになっている証拠ですもんね。4章の書下ろしエッセイは、紆余曲折(うよきょくせつ)ありつつも田房さんがご自身を受け入れていく様子が描かれ、メイクやファッションを楽しんでいてとてもハッピーな雰囲気ですね。

田房:YouTubeのメイク動画をボーッと見てて、やってみようかな、と思って真似してみて、そしたら前髪のボリュームが足りないと分かって、と順を追って「次にやること」が具体的に分かっていったのが、楽しさにつながりました。今まではそもそも鏡を見れないから、どこから手をつけて何を改善すればいいのか分かんなかったんです。

「次にやること」をやっていくと見違えてくるわけで、ある地点でタレントのYOUさんっぽくなったんです。YOUさんそっくりになったわけじゃなくって、YOUさんみたいに「きれいでいようとしてる中年女性」になれた、っていう意味です。

わけもわからずイカダで漂流していた自分が、方位磁石や灯台を頼りにすることを覚えて、「YOU島」にたどり着けました。

YOU島の港に着いたら、今度は自分好みの服とかメイクのジャンルを選んでいいんですよね。自由におしゃれを楽しんでいいっていう土台を、前世代の女性たちが作ってくれたおかげだなって思います。それに今は女性が自虐しなくていい時代。私が子どもの頃は、年齢を隠す女性が多かった。