定年退職直前に超新星爆発の観測に成功し、ノーベル賞を受賞!
そんなユニークさを持ち続けていた小柴氏ですが、彼がノーベル賞を受賞したのは、超新星爆発で飛びしたニュートリノという素粒子の観測に成功したからです。
(画像:Nobel Prize Outreachより)
では、素粒子とはどんなものでしょうか。私たちが普段手にしているあらゆる物質をどんどん細かく分解していくと、目に見えない小さな粒子に分けられます。その粒子が「素粒子」です。素粒子の性質を理解することが、私たちが生きる自然界を知る上で欠かせないため、近年、多くの科学者が素粒子の研究に励んでいます。
何種類かある素粒子のなかでも、なかなかキャッチできないのが「ニュートリノ」でした。そのニュートリノが遠い宇宙の超新星爆発で大量に飛びだすことを世界ではじめて観測で突きとめたのが、小柴昌俊氏の研究グループだったのです。
最初の目標は別の現象だった?!
ただ、小柴氏は最初から「ニュートリノを探そう!」と思っていたわけではありません。
当初小柴氏は、「陽子」という粒子が自然に壊れてしまう「陽子崩壊」という現象を見つけようと考えていました。そして、陽子崩壊の際にでるはずの信号を観測しようとして、「カミオカンデ」という巨大な装置をつくったものの、何年実験しても陽子崩壊は見つからずじまい。「実験は失敗か……」と内心思った人も多かったことでしょう。
(画像:スーパーカミオカンデ公式サイトより)
ところが、小柴氏が定年退職する1カ月前、重い星が燃えつきたあとに爆発する「超新星爆発」が、大マゼラン星雲のなかで発生。これは肉眼で見える超新星爆発としては、なんと350年ぶりのものでした。
このとき「カミオカンデ」は15万年もかけてはるばる地球にやってきたニュートリノを11個もキャッチすることに成功! 同時に、この発見によって、超新星爆発の瞬間にニュートリノが大量に発生することが確認されました。
退官直前に超新星爆発が起きた幸運がすごい
このとき人類は、普通の望遠鏡では絶対に見ることができなかった「星の中心がつぶれる様子」を探る方法を、手にしたのです。
この功績により、小柴氏はニュートリノ天文学の開拓者としてノーベル物理学賞を受賞しました。退官直前に超新星爆発が起こるとは、とてつもない強運ですが、やはり幸運の女神は準備のできている人に微笑むものですね。
なお、小柴氏たちが最初に目標にしていた「陽子崩壊」という現象は、いまもまだ観測されていません。ただ、こうしたトライ&エラーを繰り返した先に、思いもよらぬ発見や発明が生まれる。その積み重ねが、いまの科学を作っているのだと思います。
【本間希樹(ほんま・まれき)】 国立天文台水沢VLBI観測所所長。1971年、米テキサス州生まれ、横浜育ち。 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程を修了し、博士(理学)の学位を取得。専門は超高分解能電波観測による銀河系天文学。特に銀河系の構造研究と巨大ブラックホールの研究。
<文/女子SPA!編集部 イラスト/オオノマサフミ> 女子SPA!編集部 大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。twitter:@joshispa、Instagram:@joshispa
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