取材後記:岩田剛典という“岩壁”を前に
筆者念願のインタビュー取材だった。岩田さんについては、これまでさまざまな観点から考察を続けてきたのだけれど、実際に向かい合ってみないことには、分からないことがどうしてもあった。
「岩ちゃん」という愛称が象徴するように、どこか天然な雰囲気を漂わせながら、それでいて芯の強い部分を伝えてくる感じがあった。率直な印象を言葉にすると、岩田剛典というひとりの表現者の“岩壁”を目の前にした感覚。高くそびえる堅牢な岩壁をひとまずは点検すように眺めてみる。どこから探りを入れたらいいんだろうか。芯の部分にある本質へ、あるいはその実像へ迫ろうとする挑戦が始まった。
岩田さん自身から口にされる俳優論は、やっぱり確かなセルフイメージに裏打ちされたものだった。自分にどんなイメージが求められ、それに対して、自分はどんなアウトプットをするのか、するべきなのか。それを考え抜いている。思考の襞を紐解き、ひとつひとつ丁寧にたぐり寄せるように話す岩田さんの言葉には嘘がない。非常に誠実な響きを持った言葉だ。
岩田さんは、言葉を持った俳優だと思った。言葉は、表現者の大きな武器になる。それは、同じ「三代目JSB」メンバーである登坂広臣さんに以前筆者がインタビューしたときにも、強く感じたことだ。繰り出される言葉のひとつひとつ、その節々に、実感がこもっていて、リアリティがある。言葉にリアリティがあるから、考え、悩み抜いた末の表現がちゃんとアプトプットされる。丁寧な生み出され方だ。「自分なりの突き詰め方」と岩田さんが言っていた実例を、この取材の場で目の当たりにした。
「ひとつの真理を得た」の一言
筆者が劇場版での具体的なシーンの素晴らしさを列挙すると、非常に感慨深く「なるほど」と感嘆まじりの声が返ってきた。この瞬間、筆者は確かな手応えを感じた。『空に住む』(2020年)が遺作となった青山真治監督の名前が出ると、深い悲しみの表情が一瞬、ため息とともに浮き上がったのも見逃せなかった。
「ほんとうの意味でフラットに」と言って熱の籠った俳優論が展開されると、「フフフ」と短く笑う。「すごく深い話に」と照れ笑いする岩田さんに、最後に読者へのコメントを求めると、柔らかな笑みを見せてくれた。一挙手一投足、そのすべてがさりげなく、品がある。
この取材は、念願であるばかりか、一点めがけて思考を総動員してきた筆者の「岩田剛典論」の答え合わせになった。若宮役のコミカルな親しみ易さが、画面上で清々しく映るのは、2018年のターニングポイントを経た先に鮮やかな景色が見えたからだと想像する。それを「ひとつの真理を得た」と言い切る岩田さんは、まさに「聡明な人」なんだと思う。「真理」の一言が、今回のインタビュー最大の収穫なのだけれど、その真理の形までは筆者の力では引き出せなかった。どうやら岩壁は、一枚岩ではないらしい。二枚、三枚と、まだずっとその先に連なっているようだ。今度はぜひ、その三枚目の岩で真理にすこしでも迫ることができたらと思う。
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<取材・文/加賀谷健 撮影/鈴木大喜>
加賀谷健 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。 ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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