「フラットに俳優というのは難しい」
――音楽と映画、両分野で活躍されている岩田さんですが、「三代目JSB」のデビュー曲を手掛けた音楽プロデューサー松尾潔さんとの対談では、「本来の自分は、岩田剛典という商品を客観的に見ているというスタンス」と自己分析していました。あるいは、先日亡くなられた青山真治監督が、『空に住む』の舞台挨拶でとても印象的なことを仰っていました。
岩田:とても残念です。うーん……。
――「岩田さんは、岩田さんという人間を生きていることにおいて、物凄く聡明な人」と青山監督が評されていました。ソロデビューを経て、自分のスタンスに何か変化はありましたか?
岩田:当たり前ですが、俳優は、それぞれ個性が違います。その人によって似合う役柄とそうではない役柄があると思うんです。さまざまな作品と監督さんに出会うことで、その都度新しい挑戦をするんですが、そこに世間の反応を加味すると難しい。自分に求められていることばかり追求すると、お芝居の役柄が狭まってしまうと思うんです。これはどんな俳優さんでも同じで、ずっと悩んできました。
自分に求められた役柄ばかり演じるのは、ある種結果がなんとなく想像でききてしまう部分があります。誤解なく聞いていただきたいのですが、等身大の気持ちとして、そうしたモチベーションを維持するのは難しいです。パブリックイメージが、付きまとってくるんです。俳優とは別に、経験値と肩書きが加わると、ほんとうの意味でフラットに俳優というのは難しいと思っています。
そんなことを悩みながら、さまざまな作品に出演させてもらった数年間でした。だんだん自分のことが分かってくる。今は、一周回ってきて、ひとつの真理を得た気がしています。
「セルフイメージ」と向き合うこと
――ソロデビューシングル「korekara」が、セルフプロデュース作品だったことからも、岩田さんはセルフイメージを客観的に持っている印象があります。昨年、クリスマスの翌日に千秋楽を迎えたの三代目JSBライブ公演では、サンタクロースの恰好でモニターに映る岩田さんを見ると、思わず「岩ちゃん、可愛い」という声援を送りたくなりますが……。
岩田:まさにそうです(笑)。アーティストは、自分を自由に表現できるようでいて、セルフイメージをすべて捨て去ることはなかなか難しいんです。立ち姿、振る舞い、声質、声のトーン、どんなものに興味があるのか、ないのかも含め、そこに存在しているだけで、今まで生きてきた人生がすべて滲み出てしまいます。そうした様々なフィルターを通してしまうアーティストに比べると、俳優の方が自由かなと思います。
セルフイメージからかけ離れた役を演じて評価されると、すごくやりがいがあると思うんです。一方で、それが必ずしも正解でもありません。最近、そんなことばかり考えています。考え過ぎなんですが(笑)。作品を選べる立場ではないので、あまり深いことを考えずに、ひとつひとつの作品に対して、いただいた役柄を最大限突き詰めるだけです。
ただ、自分なりの突き詰め方で、この役をやり切ったと思っても、評価されないこともあります。逆に、自分ではぴんときていなかったものが、評価されたり。分からないものです。だから、究極、考えることをやめるんです(笑)。
――その意味で、「Be My guest」のセルフプロデュースはかなり重要なことでしたか?
岩田:そうですね。自分のプロデュースをようやくトライできたので、この先が楽しみです。すごく深い話になってしまいましたが(笑)。
――とんでもありません! 最後に、読者への一言をお願いします!
岩田:シャーロックがパワーアップして帰ってきましたので、是非、劇場にお越し下さい!