株式市場は数年に一度は暴落する。87年のブラックマンデー、90年の日本のバブル崩壊、00年のITバブル崩壊、08年のリーマンショック、15年のチャイナショックなどがその代表だ。

暴落局面で手持ち株を塩漬けにして傷を深めてしまったり、下がったところで狼狽売りしたりするのが「普通の投資家」だ。一方、暴落時に逆張りで大きく資産を築く「一流の投資家」がいる。

その代表であるウォーレン・バフェット氏の手法を、いつか来る暴落時にとるべき行動の参考として見ておこう。 

バフェット氏の本質は暴落時にリスクを取ること 

バフェット氏は投資で最も成功した世界を代表する大富豪の一人であることに異論がある人はいないだろう。11歳にして株式投資を始めその後70年以上にわたる投資活動で9兆円とも言われる資産を築いた。 

バフェット投資の代名詞とも言えるのが”バリュー投資”だ。同氏はキャッシュフローを常に生み出すような企業価値の高い会社を割安時に購入して長期保有する手法で巨額の資産を築いた。徹底して過去のバランスシートや損益計算書を分析し、ハイテクなど(今は変わってきているようだが)自分で理解できない会社には投資せず、投資銘柄数を絞りこんで長期保有するスタイルだ。キャッシュフローを継続的に生み出す会社は、たとえ株価が上がらなくても、配当、分割、自社株買いなどで実質価値が上がり長期の複利効果を生み出す。 

世の中に多く存在するバフェット本では、バフェット流の銘柄選択にフォーカスしている本が多いが、バフェット氏の本質は「金持ち投資家」として暴落時に逆張りでリスクを取れることにあると筆者は感じている。

バフェットがリーマンショックの資本市場の崩壊を救った 

「金持ち投資家」の典型がリーマンショック前後の投資行動だ。リーマンショックは、信用力が低い人向けの住宅ローンである米サブプライムローンの価格が07年に住宅バブルの崩壊で急落し始めたことに端を発した。サブプライムの損失の拡大で、08年3月に大手証券会社のベアー・スターンズが破綻した。サブプライムは転売され多くの金融機関に高利回りの投資商品として保有されており、損失が金融機関全体に拡がった。名門投資銀行リーマン・ブラザーズもサブプライムのエクスポージャーが高かったことで株価が売りたたかれ、08年9月に破綻にまで追い込まれた。他の名門投資銀行であるゴールドマン・サックス、モルガンスタンレー、メリルリンチまでも株価が大きく売られ、資金繰りに窮する状態にまで追い込まれた。 

この金融危機、資本市場最大の危機を救うべく立ち上がったのがバフェットだった。ゴールドマン・サックスは、バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイ社に50億ドル(当時の時価約5000億円)の緊急出資を仰ぐことで資金繰りのピンチを凌いだ。当時、どの金融機関にも余裕は少なかったため、同社が引き受けた条件は破格なものだった。引き受けた優先株は利回りが10%と高く、さらに時価よりも安い値段でゴールドマンの株を50億ドルで買うコールオプションが付いていた。 バークシャー・ハサウェイの出資で世界の金融危機は底を脱し、金融機関の株価も戻り始めた。同社はゴールドマンの50億ドルのコールを行使し大株主となった。 世界の窮地を救い感謝されながら、自分もリスクを取った分儲ける。これが金持ち投資法の典型だ。 

同じ頃に、三菱UFJ銀行はモルガンスタンレーに、みずほ銀行はメリルリンチに緊急出資をした。日本のメガバンクはサブプライムのエクスポージャーが少なく世界のビッグ金融プレイヤーの中で比較的余力があったからだ。 

三菱UFJ銀行が09年10月にモルガンスタンレーの優先株として出資した90億ドルも配当利回りが10%だった。これはバークシャー・ハサウェイとゴールドマンのディールを参考にしたと言われている。現在でも三菱UFJは、モルガンスタンレーの約23%を保有する筆頭株主である。日本で三菱UFJモルガンスタンレー証券があるのは、当時両社の日本の証券部門を合併したためである。 

みずほの場合はメリルリンチと資本関係までは至らず、その後メリルリンチはバンク・オブ・アメリカ傘下にはいることを選んだ。ただ、バンク・オブ・アメリカも08年にサブプライムで瀕死のカントリーワイド社とメリルリンチを買収したことで経営が悪化、11年8月にバークシャー・ハサウェイに50億ドルの出資を仰ぐことになる。これも利回りが6%で時価より安い値段でのコールオプション付きのディールだった。 

バフェット氏はバフェット指数でキャッシュをコントロール? 

バフェット氏がこういう投資行動を取れたのは、リーマンショック前にキャッシュポジションを高めていたからだと言われている。リーマンショック前の07年末の同社のキャッシュポジションは433億ドルだった。暴落時にゴールドマンなどに出資した結果08年末には255億ドルにまで減った。暴落前にキャッシュを増やし、暴落に買い向かった形だ。 

バフェット氏は株式市場の時価総額を名目GDPで割った「バフェット指数」という独自の指標で市場の状態を見ているという。世界の時価総額、世界のGDPで見るとリーマンショック前、チャイナショック前に100%を超え、現在も100%を超えている危険ゾーンにあるようだ。

バークシャー・ハサウェイのキャッシュポジションは17年6月末に約1000億ドル、9月末には1090億ドルと過去最高に達している。同社の時価総額の4分の1程度に達する。バフェット氏は、株式投資に弱気になっているわけではないが、買える銘柄が少ないというコメントをしている。

想定外の理由で株式市場や債券市場などが数年に一度急落するリスクを「テイルリスク」と称する。もし、今テイルリスクが発生しても、バフェット氏には世界を救えるだけの余力がありそうだ。 

金持ち投資のポイント2つ

①資金マネジメントが上手い、②投資の時間軸が長い

金持ちがこうした逆張り投資が出来るのは、危機前にキャッシュポジションを増やす「資金マネジメント」が上手いことと「投資の時間軸」が長いことがあげられる。 

通常、年金、投信、ヘッジファンド運用では、長くても1年、普通は4半期毎、場合によっては月次で運用結果が問われる。時間軸毎にベンチマークを上回る結果を出さないと、運用委託資金が解約され、ファンドマネージャーが交代させられてしまうリスクがある。そのため多くの投資家の時間軸は短くなる傾向だ。時間軸が短いと順張りにならざるを得ない。 

バークシャー・ハサウェイや富裕者層の口座は比較的時間軸が長い。時間軸が長ければ急落時に買って何年か寝かすつもりの逆張りが可能になる。 

機関投資家の多くはリーマンショックで壊滅的なダメージを受けた。その反省からテイルリスクだけは避けるような運用方法を採るようになってきた。常にストレステストなどで市場の危険度をチェックし、株、債券、オルタナティブなどの分散投資比率を積極的に調整することで大きなロスであるドローダウンを防ぐことことを主眼とするような投資手法をとりはじめた。 

今のアメリカ株や世界株がバブルなのかバブルでないかはまだ判らない。ただ、常にキャッシュポジションをしっかりマネジメントし、危機発生時には時間軸を長い投資スタイルにシフトすることが過去の経験則からは大事だろう。 

日本株もリーマンショック後の安値は08年に日経平均は6994円まで下げた。その前後で買えればすでに3倍以上になっている。弱気だからキャッシュポジションを増やすのではない、大きく下げたら買えるようにキャッシュポジションを増やすことの重要性を理解しておきたい。 

(ZUU online編集部)

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