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2019/08/21

相続放棄手続きの手順とポイントを行政書士が解説

(写真=PIXTA)
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一般的に、人が亡くなった後は、その人の相続人が遺産を引き継ぎます。しかし、相続する遺産は、基本的に相続人がすべて引き継がなければならず、財産はもちろん、借金があった場合も、相続しなければなりません。財産よりも借金が多いケースなど、相続人が相続そのものをしたくない場合は、「相続放棄」という選択肢があります。相続放棄の手続きの手順とポイントを詳しくご説明いたします。

相続のとき相続人が取れる3つの選択肢

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亡くなった人(「被相続人」といいます)が残した財産について、相続人が取ることができる選択肢は、3つあります。

全てを引き継ぐ単純承認

まず1つは、被相続人のすべての財産、借金を引き継ぐ方法で、これを「単純承認」と言います。これは、特に手続きを行う必要はありません。

一部を引き継ぐ限定承認

2つ目が、受け継いだ財産の範囲内で被相続人の借金を負う「限定承認」です。

借金だけしか残らない場合は、その不足分を支払う義務がなく、逆に借金を精算して財産が残ればそれを引き継ぐことができるというものです。

例えば、財産が1,000万円、借金が1,500万円だった場合、財産の1,000万円を借金の返済に充てます。まだ500万円不足していますが、その分は免除され、これ以上の返済はしなくて良いということなります。

また、財産が1,500万円、借金が1,000万円だった場合、財産の1,000万円を借金の返済に充てます。この後で500万円が残っていますから、それは相続することができます。

全てを拒否する相続放棄

そして3つ目が、被相続人の財産、借金をすべて受け継がない方法で、これを「相続放棄」と言います。

被相続人の財産よりも借金の方が明らかに多い場合に、被相続人が持っていた財産、負っている借金の受け継ぎを拒否する手続きをすることで、その相続人は初めから相続人でないとみなされます。

3つの選択肢のうち、限定承認と相続放棄は、相続の開始があったことを知って日から3ヵ月以内に家庭裁判所で必要な手続きをしなければなりません。

もしこの期間を過ぎれば、単純承認とみなされ、すべての財産、借金を引き受けなければなりません。

相続放棄手続きはどんなときにすべきか

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相続人は、どのようなときに相続放棄をすればいいのでしょうか。

まず、気を付けなければならないことは、限定承認、相続放棄を手続きできる期間がたった3ヵ月間しかないことです。

被相続人が亡くなり、お通夜、葬儀、初七日、四十九日などと、法事に追われているうちに、3ヵ月間は、あっという間に来てしまいます。その間に、被相続人の財産、借金をすべて調べて、相続するかしないかを判断するのです。

相続放棄をするかどうかの一番の目安は、借金の有無とその金額です。もし借金がまったくなかったら、単純承認を選択して良いでしょう。

一方で、借金が多額であり、それに比べて財産が少額であれば、相続放棄を選択した方がいいかもしれません。また、借金と財産の両方があり、その差額にあまり差がないようであれば、限定承認を選択しても良いでしょう。

なお、3ヵ月の期限内で、相続財産の把握が十分にできず、相続放棄をすべきかどうかの判断ができない場合には、期間の延長を申し出ることができます。

期間の延長を申し出る場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続の承認(放棄)の期間延長の申立書」を提出します。なお、この手続きの期間も相続開始を知った日から3ヵ月以内です。

相続放棄手続きの手順を紹介

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被相続人の財産、借金の全部を受け継ぎたくない時は、相続放棄の手続きを行います。相続放棄の手続きは、相続人単独で行って構わず、他の相続人と意見を一致させる必要はありません。

例えば相続人が3人いて、その中の一人が相続放棄をした場合、その人は初めから相続人とはみなされませんから、残りの2人の相続人で財産、借金を引き継ぐことになるのです。

相続放棄に必要な書類と提出場所

相続放棄をする場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の文書、資料を提出します。
  • 相続放棄申述書(家庭裁判所に備え付けの書類)
  • 申述人(相続人)の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍謄本など(除籍簿)
  • 被相続人の住民票・除票
  • 収入印紙(一人800円)
  • 返信用の郵便切手(家庭裁判所によって異なります)
  • 申述人(相続人)の認印

相続放棄申述書を提出した後の手続き

相続放棄に必要な書類を家庭裁判所に提出した後は、一週間程度で家庭裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」が送られてきます。ここには、いくつかの質問事項が記載されています。

受け取った相続人は、その質問事項の答えを記載し、家庭裁判所に返送します。そして、家庭裁判所は、相続人が記載した回答に問題がないと判断すれば、相続人に「相続放棄申述受理証明書」を送ります。

この証明書が送られてくることで、相続放棄の手続きが完了します。

遺産のうち、借金が大部分を占める場合は、大多数の相続人が相続放棄を選択します。ただし、期間が3ヵ月しかありませんから、早急に相続財産を調べて、放棄するか相続ずるかの決断をしなければなりません。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)

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