仕事をためないために、一番有効そうな方法は「とにかくすぐにやってしまう!」ことです。しかし、この方法でも仕事が終わらないのはなぜでしょうか?「今すぐ」やっても十分に進めることができないほど、「計画」が必要なのです。

(本記事は、佐々木 正悟氏の著書『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』=KADOKAWA、2017年12月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

今すぐやっても終わらない……

これは事実です。やらないから、進まないのです。少なくとも、やらなければ進むはずがありません。少なからず、仕事を前に進めるには「やるしかない」のです。それも今すぐに!

たしかにいつもメールチェックして、あるいはツイッターに逃げ、はたまたネットサーフィンによる情報収集ばかりしていて、仕事を進められるはずがありません。そういうことを実際にしていた私としては強いインパクトをこの本から受けたものです。

ですが、それはまったくその通りであるとしても、それでも「とにかく見境なくすぐやる!」だけでは、仕事が終わらなくなっていくのです。

そういうチャンバラ映画みたいな、かかってくる相手を”バッサバッサ”と切りつけるというスタイルでいっても、たぶん今のビジネスパーソンは仕事がたまっていってしまうでしょう。

端的に言えば「今すぐやる!」ばかりでは仕事は終わらないのです。

どうせしなければならない仕事であるなら、それに優先順位をつけたところで何にもならない、というのです。

それは半分まで、その通りでしょう。たしかに結局やることなら、重要だから先にやるとか、重要でないことは後回しにするといったところで、あまり意味がありません。

しかしこの考え方には問題が残っています。仕事に取りかかる順番によってはムダが生じかねないこと、仕事に取りかかる順番を間違えると途中で息切れしかねないこと、結局やるかどうかが曖昧な仕事もあるといったことなどです。

重要度による「優先順位」ばかりではなく、仕事にはやはり取りかかる

順番というべきものがあるのです。

したがって、仕事に取りかかる順番、「計画」というものを立ててから仕事を「すぐやる!」べきなのです。「とにかくすぐやる!」では、たいていのことは決してうまくいきません。特に「プロジェクト」などと言われている長期間にわたる仕事ほど、そうです。

というわけで計画を立てることの必要性をまず確認しましたが、計画といえば「計画倒れ」「三日坊主」「現実と無関係な青写真」といった結果に陥りがちなものでもあります。「計画通りにいくなら誰も苦労しない」と言ってのける人もたくさんいます。

しかし、「計画通りにいかない計画」を立てるのはやはり計画を立てる側の問題です。どんな計画であっても、決してその通りにはいかないから、立てる意味はない、とはならないのです。

計画は、そのときがきたらその通りにできるように立てるべきです。したがってまずは、何の仕事にせよ、実行日次に書かれている仕事を、実行日次がやってきたときに「終わらせられる」というものになっていなければなりません。

だからまずは計画表なりカレンダーなりを見て、想像してみましょう。

明日でも、1週間後でも、100日後でもけっこうです。計画表には「何日」の「いつ」「何」をすると書かれていますか?

それは、間違いなくその時がきたら、やれますか?

この問いに「イエス!」と言えない計画は、修正されねばなりません。これはとても単純な話でありながら、非常に多くの計画で無視されています。信じられないほど、無視されているのです。「できっこないよこんなの……」とすぐに答えられるようなものが、そのまま放置されているのです。

使える時間だけを考えよう

計画というのは、たとえば100ページの文書を作成するのに、100日あるなら、1日1ページという単純な割り算から始まります。

ここで問題にするべきは、1日1ページずつ作成する「時間がとれるのか」ということだけです。

時間がとれるかどうかは正確には分かりませんが、「何にも優先して時間を取る!」と決めたなら、「起床してすぐの時間」から「通勤時間」「出社してすぐの時間」「お昼休みの時間」まで、可能性のある時間帯はあるはずです。

もちろん割り込みの仕事が入ったり、会社でなければできないこともあるでしょう。そのような事情を考慮した上で、計画された仕事に割り当てられる時間を、最大限度見積もるのです。

ここで、少なからぬ人が、「気持ち」や「感情」を考慮しようとします。「この日は疲れていて気分がのらないだろうからやめにしよう」とか、その分「この日は元気そうだから1日3ページはいけるだろう」といったことを考慮しようとしがちです。

しかし、「気持ち」や「感情」を考えてはいけません。「気持ち」などというのは、時間よりも読み切れないものですし、暗示にも左右されます。「その日は出張帰りで元気がなさそうだ」などと思っていると、本当にそうなりかねません。

計画は、機械的に作ります。ただし、時間はできるだけ徹底的に考慮しなければなりません。

疲れていたり、元気がなくても、文書作成はできるかもしれませんが、1秒ではできないからです。その意味では未来の自分の使える時間には配慮が必要です。

仕事がたまるのは、結局計画通りに仕事が進まないからなのですが、計画通りに仕事が進まないのは、時間がとれなくなるからです。

だから、確実に確保できる時間はきわめて貴重であり、そのような時間だけをあてにして、計画に対する時間の「総量」をたえまなく意識しておくことが大事です。

可能であれば、毎日三度、計画表を見直して確保できる総時間を意識し直します。やがて覚えてしまうくらいにです。そうすれば「今のペースで仕事がはたして終わるのか?」を把握できるようになっていきます。少なくとも知らないうちにたまっていた、などということはなくなります。