「今すぐやること」と「次にすぐやること」

今すぐやらなくてはいけないことなのに、どうしてもそれができず、先送りしてしまったり、ネットサーフィンを見てダラダラしてしまう……。そういうこともあるでしょう。

いわゆる「先送り問題」は、特定の誰かだけの問題ではなく、非常に幅広くまん延している現象です。

先送りしてばかりいる人が、特にダメ人間であるとか、特に意志力が弱いといったことではないのです。

ただ、しょっちゅう先送りを繰り返していては、どうしても仕事はたまりがちになります。仕事だけではなく、プライベートで片づけなければならない、ありとあらゆることまでたまってしまいます。

そこで、ちょっとした工夫をしましょう!

この工夫を用いれば、全部とは言わないまでも、かなりのことを片づけられるようになります。

それは、「今すぐやること」を「今すぐやること」と「次にすぐやること」に分けるという工夫です。

営業の仕事は「分割」を提案すること

「今すぐやること」を、「今すぐやること」と「他のこと」に分けるというのは、一見子どもだましのようかもしれません。でも、この「分割」という手段はきわめて強力なのです。

その証拠に、保険の営業さんや、税理士といった人たちが提案することの多くが「分割」です。

これらの仕事をする人たちは顧客やクライアントに「今すぐお金を払う」ことや「今すぐ契約する」ことを勧めます。

しかし、顧客はたいがい、少しでも迷い続けていたいものです。たとえ最終的には契約することになるにせよ、今すぐお金を払ったり契約したりすることは、痛みをともないます。

しかし営業をしている人たちは、顧客と直接話す機会を取り逃せば、人間得意の「先送り」がいつまでも続くということをよく知っています。

先送りがいつまでも続くようでは、成果になりません。だから何とかして先送りさせないような、あらゆる手段を活用します。なかでも、最もよく使われているのが「分割」です。つまり、お金を払うのも、今すぐでなくていいし、契約も今すぐ全部しなくてもいいのです。

今しなければならないことは、1ヵ所にサインと印鑑を押すだけでよいとか、口座番号と口座名義を書くだけ、といったことにするのです。

今すぐすべきことをいかに減らせるか?

仕事の先送りの防止は、今すぐしなければいけないことをいかに少なめに抑えられるかにかかっています。メールに返事を書いて送るのは今すぐできなくても、一読して返信ボタンを押すだけならできます。つまり、

〈今すぐメールに返事する〉=〈今すぐ返信ボタンを押す〉+〈次に「お世話になっています」と入力する〉

というように「分割」するわけです。

このようにするクセがつけば、間違いなく仕事は進んでいきます。「メールに返事を出すのは面倒だから、ちょっとネットサーフィンしよう」というパターンとは、雲泥の差がつきます。

一般的に作業は、「分割」すればするほど進めやすくなるし、まとめればまとめるほど、手のつけにくいものになっていきます。

そういう意味でも「仕事をためる」というのは最悪の手段です。たまっていなければもっと楽に片づけられた分を、わざわざためることによって、とっつきにくく、「分割」の難しいものにしてしまい、しかも締め切りまでに使える日数を少なくしてしまうからです。

「タスク」と「予定」は違う

自分がしなければならないあらゆる「用事」「作業」「タスク」と、「予定」を分けて考えることは、仕事をためないように時間をうまく使うために、きわめて役にたつ考え方です。

「予定」と「タスク」を分けるポイントは、開始時刻の有無です。開始時刻を自分で変えられないなら、それは「予定」です。反対に、たとえ自分で始める時間を決めたとしても、開始時刻を自分で変えられるなら、それは本当の意味での「予定」ではなく「タスク」なのです。

簡単な例を挙げるなら、メールチェックは「タスク」であり、会社の会議は「予定」です。

カレンダーは「予定」の管理ツール

「予定」と「タスク」を分けて考えないと、時間の管理はなかなかうまくいきません。結果として仕事がたまっていきます。たとえば、カレンダーや手帳などを使っている人は、「予定」だけを管理する傾向があります。

明日の12時から会議、金曜の15時から歯医者さん、などというのが「予定」です。やらなければならないことが本当にそういうものだけならば、これらだけを管理すればいいのですが、ほとんどの人はそうではありません。

メールチェックも、経費精算も、資料作成も、オフィスの掃除も、すべては「開始時刻が厳密には決まっていないタスク」です。こういったものをまったくリストアップしないでおくと、簡単に思い出せるものからしか手をつけられなくなりますし、全部の「タスク」が終わったのかどうかの不安が消えなくなります。

だからといって、全部の「タスク」を手帳などに書き込むのは現実的ではありません。おそらく書き込める欄も足りないでしょう。

したがって、折衷案として「今日だけの」タスクリストに予定を書き入れ、しかも「予定」だけは「予定」と分かるようにしておく必要があります。

「本日以後」の「予定」は手帳やカレンダーに任せましょう。

「タスク」と「予定」を分けることで、「タスク」に取りかかり、やりとげてしまうべき「目安」が手に入ります。こういったものがないと、なかなか締め切りを意識して「タスク」を終わらせることが困難になります。

締め切りを意識することで、能率を上げるという機会も失ってしまうのです。