今すぐやれることは何か?

久しぶりに時間がとれたから、ずっと遅れ気味だったプロジェクトをイッキに進めよう。

こう考えていざ取りかかるものの、たとえば5時間あっても、プロジェクトはほとんど進展しない。そういうことはよくあります。

私たちの時間感覚はかなり大ざっぱです。遅れがちなプロジェクトの仕事がどれほど「たくさんの時間」がかかりそうだとしても、「5時間」は「たくさんの時間」なのだから、「たくさんの仕事」を「たくさんの時間」でやっつければ何とかなる、などと思ってしまいがちなのです。

けれど実際には、200時間分の仕事に関して5時間作業をしても、進むのはせいぜい全体の2~3%にすぎません。

もちろん、プロジェクトの2%を1日で終わらせられれば、それは素晴らしい成果です。でも私なら、100日かかるであろう書籍原稿があったとして、「1日5時間かけて書けるところまで書こう」などとは思いません。もっと違った戦略を立てます。

毎日数分でもいいから時間をかける

たとえば、遅れ気味のプロジェクトにかけられる時間を5時間確保したのであれば、それを使って今後100日間のシミュレーションを綿密に行います。

1日あたりにしなければならないタスクを100日分洗い出して、それを計画的に配置します。

さらに、1日ごとの日程を可能な限り検討し、どの日のどの時間帯であれば、どのタスクを進めることができるかまで、子細に検討するのです。

こういったことは、かなりの時間を要します。5時間かけても、100日分のシミュレーションを十分やりきれるとは限りません。

しかも、たとえ100日分の立派な計画を立てたとしても、それは仕事を進めたということにはなりません。だからこそ、ほとんどの人は計画などには一切時間をかけず、少しでも時間があれば、その分の仕事を進めようとしてしまうのです。

しかし、「今すぐ」やっても十分に進めることができないほどの大仕事については、「今すぐやる」のではなく、「今すぐ計画を立てる」べきです。

千里の道の一歩目は足取りが重いもの

計画を立てることにはいろいろな意味がありますが、うまく立てられると、モチベーションが高まります。

「千里の道も一歩から」と言いますが、最後の一里と最初の一里とでは、どうしてもモチベーションに差がついてしまいます。早い話、長い道のりの出だしはつらいものです。

大プロジェクトの取りかかりの段階には、もちろん最終的なゴールについて何もイメージできませんから、力を費やすことがひどくむなしく思えます。

人は成果を求めて行動を起こす生き物ですから、成果がはるかかなたにあっては、やる気が起きなくて当然なのです。だから、「今日ちょっとやったくらいでは意味がない」という感じがしてしまって「まとめて時間がとれたときにやろう」となりがちなのです。しかし、

「まとまった時間がとれる」ことなどめったになく、たとえ「まとまった時間」がとれても、全体の1%ちょっとしか作業が進まなかったりします。まとまった時間を費やしてすら、まとまった成果などめったに手に入らないのです。

したがって、まとまった成果頼みに仕事を進めるのは得策ではありません。

それよりも全体の計画を綿密に立てて、たとえ日々の成果はほとんどなくても、かならず仕事全体を終わらせる方向に向かって歩んでいるという実感のほうが役にたちます。

計画さえたしかなものであれば、ゴールに近づいていることは確実なのであって、途中で倒れてしまわない限り最終目標地点にたどりつけます。