文は広い湖の真ん中で、ひとり体育座りしているような男
――オプションとのことですが、そうはいってもあれだけの体の絞り方は凄まじいです。外見を作ることによって、内面に影響することはありますか?
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松坂「無駄なものを摂らないことによって、脳が活性化されるといったことはあったと思います。でも体を絞ることが直接役作りと繋がっているかといえば、僕の中ではそうではないかなと。
例えば20キロ体重を増やしましたとか、15キロ落としましたとかって、数字的にもとてもキャッチーですし、分かりやすく伝わる感じはありますが、原作と脚本を読んだうえで、これは必要だと感じたベースラインにすぎないというか、必要最低限のことかなと。これをすることによって、役作りをしたとか、役に近づけるとかはあまり思っていませんね」
――文の心の有り様としてつかんだものを言語化するのは難しいとは思いますが、どうにか表すとすると。
松坂「そうですね。すごく難しいですけど、イメージとして言うのであれば、一切波風の立っていない広い湖の真ん中に、体育座りでポツンとひとりいるような、そんな男性かなと思います」
コップの水がわっと溢れ出したようなクライマックス
――クライマックスは、本当に目が離せませんでした。
『流浪の月』より
松坂「あそこは、ずっとコップの中に溜めていた水が、表面張力を超えてわっと溢れ出す感じだったというか。なので、撮影に入る前、そしてそこまでの撮影期間の間に、どれだけ水を溜めていけるかが大切でした」
――ほぼ順撮り(物語の進行に沿った撮影順)だったのでしょうか。
松坂「そうですね。ただ、僕としては子どもの頃の更紗(白鳥玉季)とのパートを撮り終えてからは、もうどのシーンから撮ってももう怖さはないと感じていました。文の中の核となるものが、もうちゃんとある感じがしたので」
――クランクアップ時に、広瀬すずさんと言葉を交わされたりはしましたか?
松坂「心の底から『本っ当にお疲れ様』と。苦労とか疲労感を共有できている感じが勝手にしていたので。あとは僕からは何を言ったかな。『更紗がすずちゃんでよかった』と伝えた気がします」