生命保険に加入する際に気になるのが、月々の「保険料」と、万が一の時の「保障額」ではないでしょうか。月々の保険料に関してはさまざまなサイトで計算できるのですが、必要な保障額はその人の家族構成などによって大きく変わります。今回は保険料がシミュレーションできるサイトと、実際にFPが行っている保障額の計算方法の概要をご紹介します。

生命保険の「毎月の保険料」と「保障額」の目安って?

(写真=PIXTA)

生命保険を検討する際に知っておきたいのは、自分に万が一のことがあった時にどれぐらいの保険金があれば残された家族が生活できるのかという「保障額」と、生命保険にかかる毎月の「保険料」です。

保障額はその人の家族構成や年金の見込み額、これまでの貯金などによって大きく変わりますが、保険料は各保険会社のホームページなどで簡単にシミュレーションできますので、まずは保険料を計算できるサイトを確認しましょう。

生命保険の毎月の保険料をシミュレーションしてみよう

(写真=PIXTA)

生命保険の保険料は保険会社によってかなり変わってきます。自分はどこの保険会社のどんな保険に加入したいか、候補をある程度まとめておきましょう。ここではいくつかの保険会社のシミュレーションページをご紹介します。

オリックス生命保険

生年月日と性別を入力するだけで、シンプルな死亡保障と医療保険の保険料の見積もりを計算してくれます。(オリックス生命保険の保険料シミュレーション

アクサダイレクト生命保険

生年月日と性別を入力した後、保険の種類を自分で選ぶことができます。ある程度保険の種類がわかっている方であれば、保険ごとの保険料を知ることができます。(アクサダイレクト生命保険の保険料シミュレーション

楽天生命

生年月日と性別の他、加入したい保険にチェックを入れます。楽天生命で死亡保障や医療保険、がん保険など複数の保険に加入する場合、その合計額を一度に計算できます。(楽天生命の保険料シミュレーション

価格.com 保険

保険会社のサイトではありませんが、「価格.com 保険」サイトでは複数の保険会社の見積もりを一度に確認することができます。どの保険会社にしようか迷っている方は、このサイトである程度目星をつけてから各保険会社に行ってもいいでしょう。(価格.com保険の保険料シミュレーション

生命保険の保障額はどのくらいあると安心?

(写真=PIXTA)

生命保険の必要保障額は人によって異なる

自分に万が一のことがあった時に必要な生命保険の保障額は、同じ年代であっても、家族構成や生活費、貯金額などで大きく変わってきますので、40代では◯◯万円と一概に相場を言うことができません。

もちろん、正確な保障額を計算するのは簡単ではないのですが、それでも必要な保障額を、どのような考えでどのような計算で設定するのかをざっくりとでも知っておけば、自分の必要保障額を知る目安にもなりますし、専門家に相談する時も理解が深まります。

適切な補償額を出す方法

では、専門家がどのような手順で生命保険の適切な保障額を計算しているのか、大まかに見ていきましょう。まず、自分に万が一のことがあった場合、家族に残すお金の必要額は、

「支出-収入-貯蓄残高」

で求めます。「支出」は今自分に万が一のことがあった時から、残された家族が今後必要になると予想される生活費や教育費などの合計です。「収入」は今後入ってくるお金で、主に年金などが当てはまります。「貯蓄残高」は現時点である金融資産の残高です。

この「支出」「収入」「貯蓄残高」を知るためにはたくさんの情報が必要になるのですが、その中でも必要保障額の計算に大きな影響を与えるのは次の3つの項目です。

<家族構成>
生命保険は自分に万が一のことがあった場合、生活が困る家族のために加入するものなので、配偶者の年齢や子供の人数は「支出」を大きく左右します。

子供に対する保障は生活費だけではなく教育費も必要になりますので、子供にどういった教育を受けさせたいかなどを、保険を検討し始めたときに家族で相談してみてもいいでしょう。

<生活費と貯蓄>
家族が1ヵ月にどれぐらいの予算で生活しているのかを知っておくことは「支出」を考える上でとても大切です。自分に万が一のことがあった時、残された家族は今の生活費のおおよそ○割で生活するものと仮定して計算しますが、何割必要かは各家庭によって異なります。

生活費を知るには、面倒ですが普段から家計簿をつけておくのが一番確実ですので、今家計簿を利用していない人はぜひ始めてみてください。実際に家計簿をつけ始めると自分では意識していなかった費用もはっきりしますし、万が一の時「贅沢できなくなったらこの項目はやめよう」と削減できる費用もわかるようになります。

また、貯蓄もできるだけ正確に把握しておくようにしましょう。この場合の貯蓄というのは、銀行に預けている貯金だけではなく、株や投資信託、貯蓄型の保険など金融資産全体のことを指します。当然貯蓄が多ければ多いほど生命保険に必要な保障額は少なくなります。

<年金情報>
国民年金や厚生年金保険に加入している人に万が一のことがあった場合、残された家族には「遺族年金」が支給されますが、この遺族年金の金額は自分が老後もらえる年金額を元に計算されます。

自分の年金額を計算するのはとても複雑なのですが、年金の加入状況や将来の予想年金額は日本年金機構から1年に1回送付される「ねんきん定期便」で確認できますし、「ねんきんネット」というWebサービスに登録しておけばいつでも詳細を見ることができます。

世帯主が40代の家庭のシミュレーション例

(写真=PIXTA)

では、実際に生命保険の必要保障額をシミュレーションしてみましょう。今回は次のような家族で、夫に万が一のことがあった場合の必要保障額を計算してみます。

今回シミュレーションする家族の情報
<家族構成>

40歳 会社員
37歳 専業主婦
長男 12歳
長女 6歳

<生活費と貯蓄>
基本生活費は年間180万円
住宅は賃貸住宅で家賃10万円(年間120万円)

金融資産

普通預金 200万円
定期預金 600万円
財形住宅貯金 500万円
投資信託 800万円
合計 2,100万円

<年金情報>

  • 夫婦ともに国民年金の未納期間無し
  • 夫は22歳から18年間(216ヵ月)厚生年金に加入し、ねんきん定期便によると、これまでの加入実績に応じた年金額は57万6,000円(年額) 遺族厚生年金は、夫が65歳以降受け取る予定だった老齢厚生年金部分の4分の3が支給されます。ただし、被保険者期間が300ヵ月未満の場合は300ヵ月とみなして計算されます。よって今回のケースの遺族厚生年金は、
     受給見込額57万6,000円×300ヵ月/216ヵ月×3/4=60万円(年額)
    となります。

<必要保障額のシミュレーション>
万が一の場合に備えて準備する必要保障額は、「今後見込まれる支出」から「すでに準備ができている資金」と「今後見込まれる収入」を差し引いて求めることができます。

1. 支出

子供が大学を卒業するまでの家族の生活費が、夫生存時の基本生活費の80%かかるとすると、
基本生活費×80%×(23-長女(末子)の年齢)
 180万円×0.8×(23-6)=2,448万円        ・・・①

長女が大学を卒業した後の妻の生活費が、夫生存時の基本生活費の50%かかるとすると、
基本生活費×50%×長女が大学卒業時の妻の平均余命(88歳まで)
 180万円×0.5×(88-54)=3,060万円        ・・・②

子供が大学を卒業するまでの教育費(表1)
 長男 中学校~高校は公立、大学は私立:約828万円
 長女 小学校は公立、中学~大学は私立:約1,450万円
 828万円+1,450万円=2,278万円        ・・・③
 

表1.小学校から大学までの学習費
小学校(6年間) 中学校(3年間) 高校(3年間) 大学(4年間)
公立 192万7,686円 146万5,191円 137万2,140円 (国立)257万円
私立 959万2,146円 421万9,299円 290万9,733円 544万3,600円

小学校から高校まで:文部科学省2018年発表の「子供の学習費調査」
大学:日本学生支援機構2016年発表の「学生生活調査」

現在の妻の平均余命分(88歳まで)の住宅費
120万円×(88-37)=6,120万円            ・・・④

死後の整理資金
 葬儀費用平均 180万円
 生活立て直し費 基本生活費の半年分 180万円×0.5=90万円
 180万円+90万円=270万円            ・・・⑤

その他の予備資金
 結婚援助 200万円×2人分=400万円
 予備資金 500万円
 400万円+500万円=900万円            ・・・⑥

支出合計(①~⑥) 約1億5,000万円

2. 収入

遺族基礎年金
 妻  78万1,700円×子供が18歳になるまでの年数(12年)=938万400円    ・・・①
 長男 22万4,900円×18歳になるまでの年数(6年)=134万9,400円    ・・・②
 長女 22万4,900円×18歳になるまでの年数(12年)=269万8,800円    ・・・③

遺族厚生年金
 遺族厚生年金60万円×妻の平均余命(88-37)=3,060万円        ・・・④
 中高齢寡婦加算(長女が18歳時の妻の年齢から65歳になるまで)
  58万6,300円×(65-49)=938万800円            ・・・⑤

妻の老齢基礎年金
  78万1,700円×(88-65)=1,797万9,100円                ・・・⑥

その他の収入として、夫の死亡退職金が500万円会社から支給され、妻はパートで15年間働き年間100万円の収入が見込めるとします。
  500万円+100万円×15年間=2,000万円                ・・・⑦

収入合計(①~⑦) 9,138万8,500円

3. 貯金残高

金融資産合計 2,100万円

◎必要保障額(支出ー収入ー貯金残高)
1億5,000万円-9,138万8,500円-2,100万円=3,761万1,500円

今回シミュレーションしたご家庭では、生命保険の必要保障額は約3,760万円という結果になりました。もちろん同じご家庭でも、住宅を購入し団体信用生命保険に加入していれば万が一の場合ローン返済の負担がなくなりますし、もう少し妻の収入が見込めるなら必要保障額も低くなります。

詳しく計算できなくてもいいので、大まかに上記のような流れで計算していると知っておけば、実際に専門家に相談した時も必要事項をうまく伝えられますし、提案された保障額が妥当かどうか知ることもできます。

自分たちにとって適切な保険料と保障額の目安を知って専門家に相談を

(写真=PIXTA)

月々の保険料を知るためのシミュレーションサイトの紹介と、実際に専門家が行っている必要保障額の出し方をご紹介しました。どちらの金額も正確に知っておく必要はないですが、どのような保険の種類があり、どのような流れでどんなことを考慮して金額を出しているのか、大体でも知っておくと、実際に専門家に相談する時も自分の意見や希望を伝えやすくなりますし、より納得して適正な金額を決めることができるはずです。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所

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