小柄な自分に運べないものは、「運べない」と言っていい

建設業界の仕事と聞くと、第一に「力仕事」というイメージを持つ人も多いだろう。小柄な古田さんにとっては、かなりの重労働なのではないだろうか?

井上工業

「最初の一週間は、現場の階段の上り下りで足が筋肉痛になりましたね(笑)。もともと、駅では必ずエレベーターに乗るようなタイプなので。でも、塗る作業自体はコツさえつかめれば力のない方でも大丈夫ですよ。

ただ、塗料は確かに重いです!私は決して体が大きい方ではないので、重たいコンクリートの袋はとてもじゃないけど運べません。

でも、面接の時に『重いものは、力のある職人さんに任せていい』と言ってもらっていたんです。実際、現場の皆さんはとっても優しくて、嫌な顔一つせず運んでくださるので助かっています」

助けてもらうだけにはしたくないという古田さん。手が空いたときには足場に落ちた小さな釘を拾うなど、現場を安全な状態にすることを心掛けている。

古田さんの働く井上工業では、チーム全体でお互いの苦手を補うことを大切にしているという。職人によってできること、できないことがあるのは当たり前。だからこそ、力がなくても負い目を感じる必要はない。

吉田さんのように、自分にできることで貢献すれば良いのだ。

井上工業

「最初は職人の世界に入るのは不安だったんですよ。怒鳴られたりするんじゃないかって心配で。でも実際は、全然そんなことはありませんでした。親方は職人一人一人をよく褒めてくれますしね」

古田さんのまとう雰囲気には、自然と周りを明るくする何かがある。きっと本人の意図せぬところで、現場にも良い影響を及ぼしているに違いない。

師匠は親方とYouTube。学ぶ方法はたくさんある

左官になって3カ月程が経った今、「この仕事の奥深さを感じている」と古田さんは噛みしめるように話す。

現場によって塗る場所、塗る道具、塗る材料は毎回異なるので、学ぶことはたくさんあるのだという。一体、どのように学習しているのだろうか。

「やっぱり一番は現場で学ぶこと。それ以外で参考にしているのはYouTubeですね。初心者用からプロ用まで、参考になるコンテンツがたくさんあるんです。

動画を見る以外では、自分が塗っている姿を撮影しておいて、おかしなところがないか親方にチェックしてもらうようにしています。常に隣に親方がいるわけではないので、この方法は役立っていますね」

向上心の強さに驚かされるが、その原動力は「楽しさ」だと古田さんは語る。

「楽しいから、できるんだと思います。独学で英会話を学んだ時と同じです。現場では『え、もう3時の休憩!?』と毎日驚いてしまうくらい夢中になっています」

井上工業

今、目標としているのは、国家資格である左官技能士三級の取得だ。まずは6月に行われる試験での合格を目指しているが、古田さんは“さらに先の未来”も見据えていた。

「面接の時、『6年くらいで一人前に』って社長に言われたんです。でも勉強する環境は身の回りにありますから、もっと早く一人前になりたいですね。それが今の私の目標です」

コロナ禍によって、想定外の方向へとキャリアの舵を切った古田さん。仕事を続けられなくなり、自らの境遇を嘆く人も多い中、古田さんはどこまでもポジティブだ。

「大変なことがあっても、楽しめるかどうかは自分次第」。古田さんの笑顔はそう、私たちに教えてくれている気がする。

 

提供・働く女のワーク&ライフマガジン『Woman type』(長く仕事を続けたい女性に役立つ、キャリア・働き方・生き方の知恵を発信中)

【こちらの記事も読まれています】
年収400万円以上稼ぐ女がしている3つのこと
性格別!年収アップ方法とは?
自分ブランドを作るために大切なこと
クセのある上司への「的確な」対処法とは
給付金がもらえる人気の資格6選