先日、とある英語関連のセミナーを聴講しました。最後の質疑応答コーナーでたくさん出てきた質問が興味深かったですね。やはり多かったのが「効果的な学習法」に関して。英語力がなかなかアップできないという、参加者の切実な思いが伝わってきました。

私自身、学び方やオススメ参考書について尋ねられることがあります。個人的には「ズバリこれです!」とお答えできればとは思います。でも英語学習に関しては、本人との相性や置かれている状況などによってベストな回答はまちまちになるのですよね。

よくあるのは、某通販サイトでテキストを探し、星の数の多さを指針とすること。私も星の数やコメントは商品購入時に大いに参考にしてはいます。でも、こればかりは好みの部分が大きいのです。現に書籍以外のもの、たとえば家電や生活グッズを買った際、多数が絶賛していても私には合わなかったということが少なくありません。よって、「試行錯誤も買い物のうち」が私の持論です。

さて、通訳業に日々携わる中、英語との接し方も私なりに定着してきたようです。それは「目の前のものすべてが学びの対象である」ということ。わざわざテキストを買ったり、どこかに行って学んだり、英語学習のために時間を設けたりせず、きっかけがあればそこが「学習場」となっているのです。

たとえば先日のこと。出講している大学のキャンパス内にツツジがたくさん咲いていました。そこで頭に浮かんだのが「ツツジって英語で何?」です。こうなるともうとにかく早く辞書を引いて調べたくなります。

もちろん、手持ちのスマートフォンでサッと検索するのも良いのですが、私の場合、あえて電子辞書で。和英辞典で「ツツジ」と引くと、azaleaおよびrhododendronが出てきました。

azaleaはカタカナの「アゼリア」で何となく聞いたことがあります。一方、気になるのはrhododendronの方。ことばの響きとしてはお花とは程遠い印象。何となく動物の「サイ」のrhinoceros並みの重厚な(?)イメージです。そこで電子辞書のジャンプ機能を使い、rhododendronを英和辞典や英英辞典で調べてみました。読むとdendronはギリシャ語でtreeのことだそうです。rhod-は「バラ」。なるほど~。では、あの似たような印象のrhinocerosの語源は?rhino-は「鼻」で、cerosの部分は「角(つの)」なのだそうです。ここまでくると「おお~~~」と感激レベルになります。

このまま引き続き「サイ」について調べたくなる心を抑えて再び「ツツジ」へ。電子辞書の見出し語だけを追いかけてみると、rhododendron bug(グンバイムシ。初耳!)、rhodolite(ロードライト。宝石の一種)などが並びます。もっと下まで画面を移動すると、ギリシャのRhodos Islandまで出てきました。「ひょっとして、ロードス島ってバラと関係ある??」などと想像することしばし。このような具合で一つのきっかけからどんどん派生していくのが楽しいのですね。

こうした調べ学習をしていると、あっという間に時が過ぎ、そのさなかにいる自分自身は別世界にどっぷりつかることができます。こうして学んだことが「即・通訳現場にて役立つ」とは全く言えませんが(笑)、知識の吸収タイムが幸せをもたらしてくれることは確かです。

役に立っても立たなくても良い。ただ、学ぶ幸せを味わえればという思いで、私はこの仕事を続けています。

(2022年5月10日)