日本動物病院協会は、社会に貢献する取り組みのひとつとして、CAPP活動を行なっています。その活動効果は、ボランティアの方、訪問先の子どもや利用者、スタッフの笑顔に表れています。ただ、その効果を科学的に裏付けることは難しく、特に病院の患者さんを対象とした研究は、世界中でも規制があり現在ほぼ不可能です。
そんな中、千葉県こども病院の医師から協力のご希望をいただき、オキシトシンを測定することによる癒し効果の研究を3年前からスタート。病院スタッフやボランティア、入院中の子どもたちとその保護者の皆様、研究者、訪問するボランティアとその愛犬たちの協力により、世界でも稀な研究が実現できたのです。
1.犬による癒しは、数年前まで感覚的評価でした
太古の昔、人にとって動物の様子を観察することは、生死に関わる重要な仕事でした。人は動物が安心してくつろぐ姿を目にすると、「その場所には自分を襲う肉食獣はいない、天候などの危険もなさそうだ」と考え、自らの気持ちを落ち着けました。逆に、リスや小鳥、草食獣の慌てふためく姿には、「自分にも危険が迫る」という胸騒ぎを感じたのです。
これは条件反射として私たちの遺伝子に組み込まれ、弱い動物が穏やかに幸せにくつろぐ姿に癒されるというのは、その姿を見ている人も安心しリラックスする、という説です。
「しあわせホルモン」オキシトシンとは?
オキシトシン(OX)は、1906年、イギリスのH・デールによって発見されたホルモンで、末梢組織で働くホルモンとしての働きは、分娩時に子宮を収縮、乳腺を収縮させて乳汁分泌を促すなどです。親子間での相互作用などで幸せを感じるときにおおく分泌され、「しあわせホルモン」といわれています。
OXはスキンシップなどにより、母子間だけでなく、男女、夫婦の絆や人間関係、さらには信頼感や認知機能にも関与することが知られ、愛情ホルモン、癒しホルモンなどともいわれています。ただ、これらはすべて人に関する認識で、犬でもOXが重要なホルモンであることが、2011年、麻布大学名誉教授 太田光明氏率いる麻布大学のグループの発見によって明らかにされました。
2.犬による癒し論に急展開オキシトシンが科学的に証明!
南アフリカの生物学者J・オデンダールは1990年代後半「オキシトシン(OX)測定で〝人と動物の関係の度合い〟がわかる」と予言しました。
このOXに注目し2000年頃から研究を重ねた麻布大学名誉教授 太田光明氏が率いる麻布大学のグループは、犬との関係が良い飼い主とその犬にも、30分のふれあい前後で尿中OXが上昇することを報告しました。
「オキシトシンホルモン」研究
信頼関係にある飼い主と犬が見つめ合うとどちらからもオキシトシンを多く放出(2015年 Science誌) ふれあいや見つめ合いによって、人と犬との間どちらにも癒し効果があることが科学的に証明された。(チンパンジーや狼にはみられず。)
日本動物病院協会
3.千葉県こども病院・血液・腫瘍科病棟でのCAPP活動
【15年間アニマルセラピーを続けてきたCAPPの千葉チーム】
さらに小児病棟での犬セラピーの癒し効果を科学的に証明!?
病院に犬が来るのは本当に特別な時間です。普段犬と暮らす楽しさとは違う「痛み、辛いことの多い入院生活に笑顔をもたらす」という、大きな意味があります。