「ゴロゴロゴロ」「ドォーン」と響く大きな雷鳴や稲妻。「ドン、ドドドン」と夜空に広がる打ち上げ花火。
皆さんの愛犬は雷や花火の音を怖がったりしませんか?
大きな音や光にも動じず平気な犬もいれば、恐怖からパニックを起こして逃走しようと暴れる、吠える、震える、咬む、逆に動けなくなる、といった行動があらわれる犬もいます。また、排泄や嘔吐をしてしまったりすることもあります。

特定の刺激に対して過剰な反応を示すことを「恐怖症」と呼んでいますが、犬の恐怖症の中でも、雷や花火などは代表的なものといえます。なぜ、雷や花火を犬は怖がるのか、怖がった時の対応や万一の事故を防ぐための工夫についてご紹介します。

1.なぜ犬は雷や花火、大きな音を怖がるの?

犬が雷を怖がる理由には、初めて聞く大きな音や強く光る雷光を「自分に危険が及ぶ、何か悪いことがおきる(不快刺激)」と感じていることがあげられます。私たちも程度に違いはありますが、「ガラガラガラ」「ドォーン」といった雷の大きな音は苦手ですね。また、突然の爆発音や人の叫び声などが聞こえると、一体何が起こったのかと不安や恐怖を感じることもあります。犬もそれと同様です。「怖い」と思って、その場所から逃げようとする、迫る危険を避けようとすることは当然の行動とも言えます。

音や光を「怖い」と感じる理由として考えられるものとして、もともとそういった性質を持ち合わせていたため(遺伝的なもの)や、社会化期(生後3~12週齢くらいの時期)に音や光といった刺激を受ける経験が十分でなかったことが理由として考えられると思います。
社会化期の経験として大きな音や光だけでなく、例えば飼い主以外の人に触れてもらう、他の犬や猫、違う種類の動物と遊ぶ、車に乗る、といった刺激や経験をすることは、その後の社会生活に順応しやすくなります。また、突然の雷や雷光で怖い思いをした(停電で部屋が真っ暗になった、真っ暗な部屋で大きな音と光が数分間続いた、その時、飼い主さんも恐怖から取り乱してしまい、その様子を間近に見てしまった、など)ということを実際に経験してしまったのかもしれません。

雷や大きな音を怖がる犬の特徴として、ノルウェーで実施された17犬種(5257頭)の騒音感受性の調査を参考に紹介します。
この調査結果では、犬の約23%が騒音を恐れていると報告しています。また、花火での恐怖が最も頻度が高く、大きな音/銃声、雷雨、交通量の多い状況、が続いています。この他、年齢が上がるにつれて恐怖が増す傾向があること、雌犬は雄犬と比較して騒音感受性が高いことも報告されています。
英語のページですがご興味ある方はこちらをご覧ください。

2.怖がる犬が見せる行動

恐怖や不安から犬に生じる行動、体の変化にはどんなものがあるのでしょうか。主なものをあげてみました。

  • その場から逃げようとする(ドアや網戸を壊す、暴れる)
  • 吠える、吠え続ける
  • 震える
  • 呼吸が早くなる(ハアハアと息遣いが荒くなる)
  • よだれがでる
  • うろうろする(落ち着かない様子で)
  • 狭いところに隠れようとする
  • 嘔吐
  • 下痢、血便 など

あなたの愛犬が雷や花火など大きな音に対して怖がる様子を見せる場合は、事前の対策や大きな事故につながらないように備えておくことが大切です。

3.愛犬が雷や大きい音を怖がる時、飼い主さんはどうすれば良いの?

愛犬が雷に怯える、花火の音を怖がる、そんな様子が見せる時、飼い主さんはどうすれば良いのでしょうか。いくつかのシーン、場面別にご紹介します。

  • 室内に愛犬の安全な場所を確保する
  • ケージを上手に利用する
  • 飼い主さん自身がまず落ち着いて。慌てたり騒いだりしないことが大切
  • 動物病院に相談する。認定医による行動診療を受診する
  • 幼齢の子犬なら、音や刺激に慣れさせる。子犬に社会化を

室内に愛犬の安全な場所を確保する

6~9月は雷が多い時期です。また大きな花火大会や夏祭りなどもこの時期に多く行われます。天気予報などであらかじめ雷が予測される場合や花火大会などが予定されている時は、普段庭など外で飼育している犬も家の中(玄関など)に入れる、部屋の中にも安全で落ち着ける場所(クレートやキャリーケースなど)を用意する、外に逃げ出してしまわないようドアをしっかり閉めておく、などの工夫をしておきます。
ただし、愛犬がケージや用意したスペ-スに十分に慣れていないときは、無理に閉じ込めたりしないように。逆に恐怖が増大してしまいます。

【獣医師監修】犬が雷や花火など大きな音を怖がる理由とその対処法!
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

ケージを上手に利用する

いつでもケージの中に入ることのできるよう、扉を開けたまま部屋の中に置いておきます。普段からケージの中にフードを置いて食べさせたり、おやつを置いたりしていると、ケージに入ることの練習にもなります。愛犬が安全な場所、隠れることもできる場所、と覚えさせておくと、色々な使い方もでき用途が広がります。災害時の避難の時や避難所で生活する時もケージに慣れさせておきましょう。大変役に立ちますよ。

飼い主さん自身がまず落ち着いて。慌てたり騒いだりしないことが大切

「雷が怖い!」と思っている飼い主さんもおられると思いますが、慌てたりせずに普段通り、落ち着いて対応しましょう。怯えて震えている愛犬を見ると心配になりますが、落ち着いて普段通りにしていましょう。犬を抱っこしたり、大丈夫だよ、と声をかけたりせずに、そのままにしておきます。
犬が不安から暴れたり粗相をしたりしても、絶対に「ダメッ」と大声で叱ったりしないように。雷や花火の音で不安な気持ちがあるときに飼い主さんに怒られると余計に混乱してしまいます。飼い主さんは「普段通り」に落ち着いて対応することが大切です。