何となく不安を「見える化」
心のモヤモヤ解消塾

オンライン学習プラットフォーム『Udemy』講師・正木美奈子さんが、働く女性のための「不安のコントロール術」を紹介。モヤモヤ、イライラ、不安な気持ちをセルフマネジメントするコツを学びましょう

皆さん、こんにちは! オンライン学習プラットフォーム『Udemy』講師の正木美奈子です。2020年からセルフマネジメント関連の講座を担当しています。

突然ですが、今日の気分は何色ですか?

ピンク、イエロー、ブルー、グリーンなど、さまざまな声が聞こえてきそうですね。

その中でも、「どんよりとした色が浮かんできた!」という人は、何となく不安やモヤモヤした気持ちを抱えているかもしれません。

そんなあなたのために、少しでも心地良い毎日を過ごすためのヒントをお伝えしていきます。

なぜ私たちは未来に不安を感じるのか?「自分らしく生きる」ことを諦めてしまう女性たちの心理

【記事執筆者】
正木 美奈子さん

世界180カ国で事業展開する外資系通信会社にてプロジェクトマネジャー、管理職として15年以上勤務。本社スウェーデンで働く機会を得たことで、女性のキャリアや効率的・効果的な「働き方」「ワークライフデザイン」の重要性を考え始める。現在はプロジェクトマネジメント・組織運営、スウェーデンをはじめとする異文化でのビジネス・生活経験を生かし、豊かな人生・働き方を得るための、単なる「時短」に終わらない「タイムマネジメント」、「ダイバーシティー」「北欧の働き方とライフスタイル」など、グローバルな視点から企業・起業家に向けて支援を行う。また、オンライン学習プラットフォーム『Udemy』では、不安コントロール、時間管理・ビジネスマネジメント・ビジネススキルなどのジャンルで講師を務める

人は「見えないもの」「分からないもの」に不安を感じてしまう

皆さんは、昔話の『一休さん』に出てくる「屏風の虎」の話をご存じですか?

将軍さまが一休さんに「屏風に描かれた虎が夜な夜な屏風を抜け出して暴れるので退治してほしい」と伝えたところ、一休さんは「では捕まえますから虎を屏風から出してください」と切り返した、という話です。

なぜ私たちは未来に不安を感じるのか?「自分らしく生きる」ことを諦めてしまう女性たちの心理
(画像=『Woman type』より引用)

今日はこの話を、少し別の角度から見てみましょう。

ここでは、将軍さまが退治してほしいと思ったのは虎でしたが、あなたにとっての「虎」は何でしょうか。

聞き方を変えると、あなたが怖いと思うものや、不安に感じているものはなんですか? という質問です。

「それが分かれば苦労しない!」という声が聞こえてきそうですが、先ほどの虎退治と同じように、あなたが不安に感じていることをまずは「見える化」してあげることが重要です。

なぜなら、人は「見えないもの」に不安を感じるものだから。

例えば、将来のこと。

年金はいくらもらえるんだろう? 結婚はどうしよう? これから物価が上がりそうだけど給料は上がるのかな? 両親はいつまで健康でいてくれるかな……? 「将来」に対しての不安やモヤモヤをあげ出すと、切りがありませんよね。

なぜ私たちは未来に不安を感じるのか?「自分らしく生きる」ことを諦めてしまう女性たちの心理
(画像=『Woman type』より引用)

これらの共通点は、「不確実」ということです。

特に現在は、VUCAの時代(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと)で、何が起きてもおかしくない「予測不能の時代」だと言われています。

新型コロナのパンデミックが起きたり、世界情勢が不安定になったり。「まさかそんなことがあるなんて」と言いたくなるようなことが立て続けに起こっています。

通常、人の脳は何か危険を察知すると、「安全装置」を作動させます。

それにより、例えば、強盗に襲われそうになったら逃げるとか、大地震が起きたら机の下に隠れるなどの行動を即座にとることができます。

これは私たちの脳に蓄積された膨大なデータから、脳が瞬時に判断をして、危険から身を守るための行動をとるように信号を送るからです。

これらのデータは自身の経験から学ぶものもあれば、テレビや映画で見たもの、本で読んだものなども含まれます。

この脳の「安全装置」の作動により私たちは守られてもいるわけですが、予測不能の時代においては、それを判断するだけの情報が不足している可能性があるのです。

自分らしく生きることを諦めてしまう人の心理

自分のデータベースにないことが次々に起きたとき、人はどれを選択するのがベストなのかが分からない状況に陥ってしまうことがあります。

特に日本は、「モノが豊か」です。これは旅行好きの私が、さまざまな国を訪れるたびに感じたことでもありました。

なぜ私たちは未来に不安を感じるのか?「自分らしく生きる」ことを諦めてしまう女性たちの心理
(画像=『Woman type』より引用)

駐在をしていたスウェーデンでは、お店に入っても品ぞろえの少なさに、当初は不満をつぶやいていたものです。ところがある時、「選択肢が少ないという事は、選ぶのが簡単だ」ということに気づいたのです。

そうなんです、日本には膨大な「選択肢」があります。

それは食料品、衣料品、日用品といったものから、キャリアに関するものまでさまざまです。

一昔前までは、男性は○○すべき、とか女性は○○すべきといったジェンダー(性別)による「モノの見方」があり、選択肢にも制限がありましたが、今はそれがどんどん変わってきています。

そのおかげで、未来をどう生きるのか、自分自身で選択することができるようになりましたよね。

つまり、「自分で自分の人生を選択する権利」を持っているということ。これはとても重要なポイントです!

なぜなら、選択肢がありながら、「自分には選択肢がない」と思っている場合があるからです。

世界価値観調査の中にこんな質問があります。「あなたは自分の人生を、自由に動かせますか?」

いかがでしょうか? 何かと理由をつけて、やらない(やれない)ことを他人や会社のせいにしたりしてはいないでしょうか。

例えば、過去の私がまさにそうでした。実際、ワーカホリックだった頃の私は、「結婚できないのは、仕事が忙しいせいだ」と思っていました。

そして「会社のために自分の人生を犠牲にしている」と、これまたものすごく筋違いな考え方に陥っていました。

当時の私はなぜか「自分には選択肢がある」ということに気づいていなかったのです。会社から見ると、ものすごく迷惑な社員ですよね。

皆さんの中にも、かつての私と同じような思考に陥っている人がいるかもしれません。

なぜ私たちは未来に不安を感じるのか?「自分らしく生きる」ことを諦めてしまう女性たちの心理
(画像=『Woman type』より引用)

一方で、「そんなことはない」という人もいるでしょう。

でもその場合、自分には選択肢があると分かっているにもかかわらず、新しいことにチャレンジしたり、自分らしい生き方に踏み出したりすることを恐れてしまうのはなぜでしょうか?

もしかしたら、そこにはこんな心理があるかもしれません。

一つ目は、確実に何かを得たいという心理、つまり損をしたくない、失敗をしたくない、という心理です。

ご存じのとおりVUCAの時代では、前例がないことの方が多いので、どのやり方が一番良いかが分からない、という問題に直面します。そうすると、なかなか前へ踏み出せません。

万が一、自分が選んだ道が間違っていて、その結果少し遠回りをすることになったり、損をしたりする事態に陥りたくないからです。

二つ目は、「人の目を気にしすぎてしまう」ということです。

私たちは、無意識のうちに「周りの期待に応えよう」と、その期待に沿った行動をとる傾向にあります。それが自分の意志とは違うものであったとしてもです。

その結果、自分の人生ではなく、誰か他の人の人生を「自分のレール」として敷いてしまってはいないでしょうか?

最後は、「人よりちょっとだけ良い生活をしたい、少しだけ優越感を味わいたい」という心理です。

例えば、親しい友人が先に結婚をした時のこと、昇進をした時のことを思い出してみてください。

「おめでとう!」と心から祝福する気持ちの反面、少し「うらやましい」とねたむ気持ちが湧き上がったり、会社をやめて起業した友人が事業に失敗して会社員に戻ったという話を聞き、なんだか「ほっとした気持ち」になったりしたことはありませんか?

大丈夫です、心配しないでください。このような気持ちは誰もが持っているものです。

それは自分と他人を比べることで、多少の優越感を得たい、「自分は価値ある人間だ」「自分はダメじゃない」と思いたいという気持ちの表れで、人として自然な感情です。

でも、そうやって人と比べてばかりいると、周りが実際よりも良く見えてしまいます。まさに、隣の芝は青い状態。

そして、「自分には運がない」「自分は何をやってもうまくいかない」とネガティブな思考に取りつかれ、不安やモヤモヤが大きくなってしまうことがあるのです。