ラブコメの王道スタイル

瀬戸康史が演じる“文学系男子”が美しすぎてため息…。ドラマ『恋に落ちたおひとりさま』を考察
(画像=『女子SPA!』より引用)

一組の男女が出会う瞬間は、さまざまな描き方がある。特にラブコメでは、お決まりのパターンがあって、向こうから走ってやって来た冴えない彼女とイケイケの彼が衝突するのがだいたいきっかけになる。

 突発的なバカバカしさと非現実的なシチュエーション描写がラブコメの王道スタイルなのだ。『~スタンダールの恋愛論~』では、いったいどんな出会いの瞬間が生まれるのか、ワクワクしながら見守っていると、やっぱりすぐにその瞬間がやって来る。それも突発的でありながら、非常に文学的な瞬間として演出されている。

 図書館の司書である岡部聡子(波瑠)が、担当するフランス文学棚の高いところに手を伸ばした拍子にぐらぐらっとふらつく。体勢を崩して後ろに倒れそうになった、その瞬間だ。彼女の腰にさっと手を当てて、全身で受け止めようとする鈴木涼介(瀬戸康史)の爽やかな雰囲気。完璧だ。

 瀬戸康史にこんなことされたら、きっと受け止められていながら、逆に卒倒しかねない。聡子は、何が起こったのか理解出来ない感じで、夢見心地のまま、思わず妄想を膨らめる。

 お決まりのパターンによって彼女と彼を出会わせ、そこから彼女の妄想が展開されることで、非現実的なシチュエーションにさらに非現実の妄想が塗り重なるようなこの場面。ラブコメの王道スタイルを大胆に飛躍させた、つかみは上々の名場面だ。