安達が発揮する“勇気”と信頼関係
長崎店舗オープン準備で忙しい安達がちょっとしたアクシデントに見舞われて、スマホが使えなくなってしまう。連絡を取ることができなくなったら、東京から捨て身で駆けつけてくるのが、黒沢という人だ。雨でずぶ濡れになった黒沢を慈しむように見つめる安達のモノローグが、本作のテーマを言い尽くしながら、美しく響く。
「この愛おしさを、どうしたら伝えられるだろう」彼は心でそう呟く。でも、この日の安達はいつもの彼とは違った。今日の彼は、行動に移す“勇気”を発揮する。緩やかな弧を描きながら、左手で黒沢の頭を撫で、右手は相手の手の甲に伸びる。安達の手に自然と感じる優しさ。握り合う手と手。どんな表情よりも、実は雄弁だったこんな美しいふたりの紛れもない愛が宿る手のクロースアップが見られただけで十分じゃないだろうか。手は口ほどに物を言う、なんて造語がつい生まれるこの名場面。この後、安達の魔法が使えなくなるのかは、ぜひ劇場で確かめてもらうとして。
あるいはこうも言う。「魔法がなくても伝えられる。その人を想う自分の気持ちを、自分の言葉で」この安達の言葉は、何か人間関係の真実を掴んだような感じがある。「自分の言葉」というのは、別に個性的であるとか特殊である必要はない。その人の実感がこもった言葉が相手に想像させる、その人なりの世界観を伝えることができたら、それで十分。
安達にも黒沢にも、それぞれの世界観がある。ふたりは、お互いの世界観(価値観)を共有し、ときに相手の色に染まってみたり、またときには自分の色を足してみたり。そんな緩く、伸びやかな試行錯誤の連続が、安達と黒沢の信頼関係を強固なものにする唯一のほんとうの魔法だろう。
チェリまほの“解けない魔法”
病めるときも、健やかなるときも、ひとつだけ確かなことがある。それは、ふたりが同じ場所にいて、同じ時間を共有する揺るぎない日常の風景だ。
朝目覚める瞬間でもいい、ソファに肩を並べてコーヒーを飲む息抜きの時間でもいい。それから黒沢が作ったご飯を頬張る安達がいつでも、「うんまっ」と言って微笑み、それをみた黒沢が、ただ「よかった」とだけ言う、そんな他愛のないやり取り。彼らの日常に散りばめられた“小さな幸せ”が、これから先も、ずっとずっと続いていくことを願いたい。
そして、何度でも何度でも、想像しよう。明日のふたりは、どんな朝を迎えるだろう。どんな朝ごはんが出てきて、どんな会話のやり取りがあるだろう。持ちつ持たれつ、支え合って生きていこうとするふたりの未来図を思い描けば、いつでも、どこかで安達と黒沢の笑い声が聴こえてくる。そんな気がしてしまうのが、チェリまほの“解けない魔法”なのだから。
<文/加賀谷健>
加賀谷健 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。 ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」や「映画board」他寄稿中。日本大学映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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