『チェリまほ』がついに映画館のスクリーンに映る日がきた!
©豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会(以下、同じ)
2022年4月8日(金)より、映画『チェリまほ THE MOVIE 〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜』(以下、『チェリまほ THE MOVIE』)が全国公開されている。
豊田悠の人気漫画作品を原作に、赤楚衛二の連ドラ単独初主演となったドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系にて2020年に放送・通称『チェリまほ』)は、Twitter世界トレンド5位(国内では1位!)に躍り出るなど、たちまち社会現象となった。
赤楚演じる、もっさりキャラな安達清と、町田啓太演じる、完璧イケメンキャラな黒沢優一の関係性が、多くの視聴者の心を捉えて離さず、ときめかせ、温めてきた。
安達と黒沢のスクリーン・デビューを祝いつつ、「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、ドラマ版を振り返りながら、『チェリまほ THE MOVIE』の“解けない魔法”について語り尽くす。
(※編集部注:以下、物語上の重要な場面の描写を含みます)
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魔法と想像力の背比べ
黒沢優一(町田啓太)は、同僚の安達清(赤楚衛二)を気遣いすぎるくらい、気遣い尽くす(怖すぎるくらい過剰に、愛くるしく!)。初めこそ、冴えない同僚のひとりにしか思っていなかったのに、今や彼の心のすべては、安達に向けられている。
一方で安達は、どちらかと言うと、相手の気持ちが分からないもっさりタイプの人間なのに、童貞のまま迎えた30歳の誕生日に魔法が使えるようになり、相手の気持ちが分かるようになってしまう。
出社した朝のエレベーターで隣り合わせになり、肩と肩が触れ合って、黒沢の心の声を聴いてしまう安達は、まさか自分に恋心が向けられているとは思ってもいなかった。自分の気持ちを読まれていることを、黒沢はもちろん知らない。安達にはすべて筒抜けなのに、黒沢は必死で安達の気持ちを推しはかり、考えようとするのが、すこしだけ可笑しい。安達の魔法と黒沢の相手に対する想像力の背比べのような、愛すべきふたりの関係性。
ドラマの世界だけでなく、現実でも愛情深い温かな雰囲気を作り出す赤楚衛二と町田啓太が演じるのだから、もうたまらなく愛おしい!
安達の持つ言葉の魔法
安達と黒沢が垣間見せる繊細で、微妙な感情の機微を、ドラマ版では約20分ほどで描いてしまう。安達自身と彼が心を読む相手のモノローグが流れるのに、それが全然説明的に感じないのは、言葉にならない心のひだを丁寧な描写で伝えることをベースにしているからだ。しかも、そのときどきのタイミングに合った言葉が重要な台詞としてさりげなく散りばめられる。試しにドラマ版の名台詞を拾い上げてみる。
第3話、飲み会の王様ゲームでキスをさせられそうになったあと、屋上で安達が黒沢にためらいがちに言う「嫌じゃなかったよ」。第7話、気持ちを抑えられずに告白をしてしまい、自分の気持ちに蓋をしようとする黒沢に対して「黒沢が好きだ」と誠実に受け入れようとする安達。はたまた第9話で安達の親友の柘植(浅香航大)が、好きになった湊(ゆうたろう)に「すみませんでした」と土下座する姿などなど。
どの台詞も文字で並ぶと、何てことはないストレートな表現の数々なんだけれど、これが今しかないというタイミングで安達の口から発せられることに意味がある。その言葉には、安達が相手の心を読む魔法以上に魔法が込められているように思う。これが、つまり、“チェリまほ”が意図するほんとうの意味での魔法の力なんじゃないだろうか。
言葉は、使い方を間違えば、相手とのコミュニケーションにズレやすれ違いを生じさせかねない。でも、タイミングという魔法を持った言葉は、相手の心に直球で入り込み、その奥へさらにじんわり浸透する。言葉によって分かり合えたとお互いに思えた瞬間以上に、感動的なものは、たぶんない。
安達が選ぶ語彙は、平易そのものだけれど、自分の気持ちを素直に絞り出した心ある言葉だからこそ、相手の気持ちを揺り動かす(小説家の柘植が発したストレートな謝罪の言葉も同様)。これが、安達の持つ言葉の魔法だ。
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