国民年金の前納をしていなくても重複が起こるケースとは?

国民年金の前納制度を活用していなくても、厚生年金と国民年金が重複してしまうケースもある。それは、厚生年金保険料を当月徴収している勤務先を月末以外の日付で退職した場合である。

厚生年金保険料は給与から源泉徴収されることによって納付される。この源泉徴収のタイミングであるが、その月の給与から徴収する当月徴収と、翌月の給与から徴収する翌月徴収があり、勤務先ごとに定められている。

当月徴収の会社の場合、給与支払時に当月の厚生年金保険料が支払われることとなるが、月末以外のタイミングで退職した場合、その月の国民年金保険料を支払う義務も生じることとなり、重複支払いの可能性が生じるのである。

このケースにおいて、厚生年金保険料と国民年金保険料はどのように処理されるのだろうか。

月末の状況によって、その月に払うべき公的年金の種類が決まる

当月徴収の勤務先を月末以外に退職した際に起こる厚生年金保険料と国民年金保険料の重複であるが、この場合、支払うべき公的年金制度は、厚生年金ではなく国民年金となる。

その理由であるが、その月に支払い義務が生じる公的年金の種類は、月末の就業状況によって決まるためである。退職日が月末であれば、その月に支払うべき公的年金は厚生年金となり、月内に退職し、月末時点において自営業や無職であれば、その月に支払うべき国民年金となる。

このように、その月に支払うべき公的年金は月末時点での就業状況によって決まる。公的年金保険料は日割計算されないので、3月30日に退職し、3月31日時点で無職の場合では、3月分として、1カ月分の国民年金保険料を支払う必要がある。

さて重複して納付してしまった年金保険料であるが、厚生年金保険料の還付を受ける必要がある。このケースでは、基礎年金番号を元に厚生年金の脱退手続きが取られるため、支払った年金保険料は厚生年金には納められず、会社の預かり金となる。保険料の還付は退職した勤務先に相談し、個別に手続きを行う必要がある。さらに、退職した会社から発行される源泉徴収票を確認し、社会保険料控除の金額が重複してしまった厚生年金保険料を含んでいないことを確認することも重要である。

年金保険料の当月徴収と翌月徴収であるが、現実は翌月徴収を採用している企業の方が多いと見られる。さらに、退社日が月末以外の場合という条件も加わるため、このケースに該当し、厚生年金と国民年金の重複が起こる人は多くない。ただ、退職日が月末以外となるケースでは、就業規則や雇用契約書等によって、自身の勤務先が当月徴収であるか翌月徴収であるかを確認しておくべきであろう。

重複を起こさないためには?

国民年金と厚生年金を重複して納付しまった場合、重複してしまった保険料は還付されるものの、手続きが必要となり、還付までの時間もかかる。更に、場合によっては、確定申告による修正等も必要となる。年金の重複は起こさないに越したことはないだろう。

ただ、退職のタイミング等によっては、こうした重複はどうしても起こってしまう場合もある。重複を起こさないためには、退職日を月末にすることや、今後の就職が見込まれる場合には国民年金の前納を控えるといった方法しかないであろう。

それ以上に大切な点は、国民年金と厚生年金の重複の仕組みを理解し、重複が起こった場合に、手続きや確定申告で戸惑わないことである。還付金請求や確定申告の修正と聞くと難しく感じるが、行うべき手続きは限られており、そこまで複雑な作業でもない。年金の重複はさまざまな事象が重なった場合に起こる特殊なケースであるが、その仕組みを整理して対応すれば、問題無いものと言える。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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