いつもより愛犬のうんちの回数が少ない?最近コロコロうんちが多いかも…。もしかしたらそれは、便秘の症状かもしれません。大切なのは早期発見と適切なケア。ここでは犬の便秘の原因から対処法、NGケアなどをご紹介します。

1.犬の便秘の原因とは?

ほとんどの犬には毎日の排泄パターンがあり、その習慣を意識していれば、愛犬の便秘にもいち早く気が付いてあげることができるでしょう。では、そもそもなぜ犬の便秘は起こってしまうのでしょうか。犬が便秘になる原因はさまざまあります。

原因① 食事内容

人間と同じように、腸内環境をよい状態に保つために欠かせないのが食物繊維。毎日適量摂取することで健康的な便通が期待できますが、食物繊維には不溶性と可溶性があり、不溶性繊維を過剰に摂取すると便が大きくなりすぎたり固くなったりと、排便がしづらくなってしまいます。食物繊維を摂取していても便秘の症状がある場合には、不溶性のものに偏り過ぎていたり、適量の域を超えているかもしれません。獣医師に相談をしながら食事内容を見直しましょう。
また、水分不足も便秘の原因になります。例えば水分の摂取量が減りがちな寒い時期は、フードに水分を含ませるなど、意識的に補給する工夫をすると良いでしょう。

原因② 生活環境

環境の変化に敏感な犬は、例えばトイレの場所を移動させたことによって気持ちが落ち着かない、などの理由で排便を我慢してしまうことがあります。引っ越し時や一時的にホテルなどへ預けた時には注意深く見てあげましょう。また不衛生なトイレも、犬が排便を我慢してしまう原因となります。人間も汚いトイレはできれば行きたくないものですよね。常にきれいな状態で、愛犬が落ち着ける環境にしてあげましょう。

原因③ 運動不足

運動不足のまま過ごしていると、腸の動きが悪くなり便秘を引き起こします。腸内環境のためにも、散歩やドッグランなどで定期的に運動をする習慣を身に付けましょう。また、散歩の時に排便をする犬の場合、散歩のリズムや回数が変化するとうまく排便のタイミングが取れなくなり便秘になってしまうことがあります。ルーティンが変わった時などは、これまで通りの排便ができているかを気にかけてあげると良いでしょう。

原因④ 排便時の苦痛

例えば肛門の周りに炎症や腫瘍がある場合や、被毛や髪の毛、ぬいぐるみの布などの異物を飲み込み、それが腸や肛門に詰まっている場合は、排便時に痛みを伴うためスムーズな排便ができなくなってしまいます。また、老化による筋力の衰えも、いきむ力の低下によって便秘を引き起こします。

原因⑤ 病気

何らかの病気が引き金となって便秘になってしまうことがあります。原因となる病気については、後述で詳しく見ていきましょう。

2.犬の便秘で考えられる病気

【獣医師監修】犬の便秘の原因とは?対処方法や注意点を解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

犬の便秘にはさまざまな原因が考えられますが、もしも病気が便秘を引き起こしている場合はできるだけ早く気が付き、その原因となる病気の治療が必要です。
犬の便秘を引き起こす病気としては、次のものがあげられます。

犬の便秘を引き起こす病気

①肛門や腸の病気

・直腸憩室…直腸の一部が袋状にふくらみポケットのように空洞ができる病気。後述の会陰ヘルニアと併発するケースが多く、排便が困難になるなどの症状が現れます。

・肛門のう炎…マーキングに使う分泌液を出すための「肛門のう」に炎症が起こる病気。痛みやかゆみから、おしりを引きずるようにして歩く、しきりにおしりを舐めるなどのサインがあります。

・腸閉塞…腸がふさがれている、もしくは何らかの異物が腸内で障害物となり、腸が正常な機能を果たせなくなってしまう病気。悪化すると死にも至るケースがあります。

・直腸脱…肛門から直腸が反転して出てしまう病気。
など

②会陰ヘルニア

会陰(陰部から肛門にかけて)の筋組織にヘルニアが起こる病気。
本来は骨盤内にあるはずの臓器や脂肪が逸脱することで、肛門付近が腫れてしまいます。発症するのはほとんどがオスです。

③前立腺疾患

前立腺が炎症を起こす、腫瘍化するなどがあげられます。この前立腺はオスにしか存在しないものです。

④脊髄疾患

脊髄の炎症や損傷などによって神経伝達に異常が生じると、排便機能が正常に働かなくなります。

⑤ホルモン疾患や慢性腎臓病

体の代謝を活性化するホルモンに異常をきたすと、体のあらゆる機能の働きが鈍くなり、それに伴って腸の蠕動運動も低下するため便秘になります。また、慢性腎臓病は主な症状の一つとして“脱水”が起こる病気です。体が脱水をおこしていると腸内で形成された便からも水分を吸収しようとするため、硬い脱水便が形成され便秘を引き起こしてしまいます。

3.犬の便秘が続いた時の対処方法

【獣医師監修】犬の便秘の原因とは?対処方法や注意点を解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

犬の便秘とは、いったい何日間うんちが出ない状態をいうのでしょうか。犬は一日に平均1~3回の排便をするのが通常ですので、2日間うんちが出続けない状態が続いたとしたら、それは便秘状態といえるでしょう。
動物病院へ行くべきか悩むところかもしれませんが、3日以上出ない場合は獣医師に相談しましょう。ここでは、自宅でもできる対処法をご紹介します。

便秘が続いた時の対処方法

対処方法① 水分を取る

軽度な便秘の場合は、水分を取ることによって便が柔らかくなり、便秘の症状が緩和されることもあります。常にお水が飲みやすい状態にしておく、飼い主から水分補給を促してあげるなどしましょう。水をあまり飲まない場合は、ドッグフードをぬるま湯でふやかしたり、少量の野菜をドッグフードと一緒に与えるなど、食事で工夫をしてみてください。

対処方法② 運動する

散歩へ出たり運動をする元気がありそうな場合は、適度に体を動かしてみましょう。運動することによって消化器官の働きが活発になり、便秘が改善される可能性があります。ただし、便秘に加えその他の体調に異変がみられる場合は無理に運動をさせるようなことはせず、病院へ連れていきましょう。

対処方法③ 食事を見直す

年齢や体の大きさなどの理由から与えているフードが愛犬にフィットせず、うまく消化ができないケースがあります。また、人工的な添加物によって消化不良を引き起こすことも。今一度、日頃与えているフードに表示されている成分表などを確認し、獣医師に相談しながら食事を見直してみましょう。

対処方法④ マッサージをする

おへその周りにある「天枢(てんすう)」というツボや、みぞおちとおへその間にある「中かん」というツボが便秘解消に効果的といわれています。愛犬がリラックスできるようコミュニケーションをとりながら寝ころばせ、おへそから時計回りにゆっくりと円を描くようになでていきます。ただし、あきらかに体調が悪そうな時や愛犬が嫌がるときには、マッサージは控えましょう。

4.犬が便秘の時にしてはいけないこと

【獣医師監修】犬の便秘の原因とは?対処方法や注意点を解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

いろいろ試してみたけれど、やっぱりなかなかうんちが出ない…。そんなとき、心配だからといって自己流のケアを試してしまうのは大変危険です。NGケアは絶対にせずに、便秘が続くようなら動物病院へ連れていきましょう。

こんなケアはNG

①自己判断で便秘薬を投与する

市販の便秘薬や浣腸などがありますが、飼い主の自己判断でこれらを使用するのはとても危険な行為です。薬の投与は必ず獣医師の判断のもとに行ってください。人間用の整腸剤を投与できるケースもありますが、これも自己判断はNG。用量や用法は必ず獣医師に相談してから投与しましょう。

②綿棒で肛門を刺激する

飼い主が綿棒で肛門を刺激するケアは、肛門や肛門の奥を傷つけてしまう可能性があり大変危険です。また、この綿棒ケアを続けることが愛犬の癖になってしまい、綿棒でケアをしないと排便できなくなってしまうことも。そうなると、長い目で見た便秘の改善方法としては逆効果になります。自己流の綿棒ケアは行わないようにしましょう。