ようやく再会したふたりに、会話はいらない

 ある日の未明、忍のマンション敷地内のベンチで一心不乱に漫画を描いている千秋。一晩中、やはり漫画を描いていた忍が外に出てくる。ようやく再会したふたり。 「漫画が好きです」  そう言って近づいてくる千秋。 「先生が好きです」  それ以上の会話はふたりにはいらなかった。

「恋してるの」  部屋でふたりきりになったとき、忍は言う。  結ばれたあと、忍は起き上がってひとり座っている。千秋は起きているはずだがそのまま横になっている。

 18歳という年の差があっても、このふたりなら、それぞれが個として立ちながら関係を続けていけるのかもしれない。そう思わせる一方で、お互いの才能をわかりあっているだけに逆に長くは続かないのではと一抹の不安も残る。それでいいのだろう。固定化した関係はお互いを腐らせる。忍は誰よりもそのことを体得してきたはずなのだから。

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<文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 亀山早苗 フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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