コンプレックスを引きずり、こじらせた男たち
一方、コンプレックスを抱えた初老の元夫・洋平(宮崎吐夢)は息子に自叙伝を残して消える。心臓に爆弾を抱えている彼だが、なんだかんだで生き延びていきそうだ。
もうひとりのコンプレックス男である岡野(池内博之)は、忍(山口紗弥加)と婚約し、ふたりで家探しをしている。なかなかいい物件に巡り会えないとあちこち見て歩くが、いっそ図面を引いて一から建てるのもいいなどと思っているようだ。ところが不用意な一言を発したために忍の気持ちが変わっていく。
高校時代の同級生だからといって、「おばさん」呼ばわりされたり「賞味期限切れのめんどくさい漫画家」などと言われたら、忍の心が離れて当然だ。彼は自分がなれなかった漫画家にやはりどこか心の底で嫉妬を覚え、身近な忍に八つ当たりしていたのではないだろうか。
「漫画を描けない自分が編集者になって漫画家に描かせる。気持ちがよかった」と言っている。これでは作家に寄り添えるはずもない。中年以降までコンプレックスを引きずり、こじらせている男は救いようがない。
最終回で流れた曲まで深読みしたくなる
その点、千秋は遠回りはするがまっすぐだった。千秋のおかげで、信じられないくらい明るい表情になったみひろ(山口まゆ)。千秋と再会して「先生も千秋も漫画はやめられないよ」と穏やかに、だがきっぱりと言う。
このふたりが会っているときに流れるのはモーツァルトのオペラ『魔笛』の「私は鳥刺し」というアリアの曲。
鳥刺しとは、鳥を捕まえる人のことだ。ドラマタイトルにひっかけたシャレなのか、「すべての鳥は私のもの」という歌詞の内容を千秋のありように絡めているのかはわからない。後者だとしたら、さらに歌詞に照らし合わせ、千秋はいろいろな女の子をモノにするということなのか、あるいはいちばんお気に入りの女の子を妻にするということなのか。つい深読みしたくなる。
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