3Dアニメでファン獲得。ECと連動して収益化

 そのようななかでの成功事例が ’17年に誕生した「ドーロベア」だ。ショート動画アプリ「抖音」で3Dアニメを投稿し、SNS総フォロワー数は約2000万。日本でもバズった経験があり、日本版アカウントも存在している。潤沢な資金力をもとに無料アニメを制作し、グッズの購買やイベントでマネタイズする方式だ。

 また、中国の「豚年」である’19年に合わせてリリースされた子豚のキャラクター「猪小屁」は動画の再生回数は一日平均2億回以上、WeChatのスタンプが春節前に1億5000万回も送信されるなどの人気ぶり。実写映像との合成が特徴で、ECサイトと連動して広告収入が入る仕組みだ。

 世界最大級の通販サイト「アリババ」も自社サービスのイメージキャラクターを作り、他のアニメキャラとコラボさせるなどの展開を推し進めている。

 ビンドゥンドゥンも日本の番組に出演して日本での知名度を獲得したが、佐藤氏によるとこうして外部コンテンツと積極的に絡むのも中国キャラクターの特徴だという。

中国がIP事業をソフトパワーに利用する可能性

 今後、中国がIP事業をソフトパワーに利用する可能性はあるか。

「コンテンツ輸出については韓国の事例を参考にすると思いますが、そこにキャラクターが含まれることは間違いないでしょう」(佐藤氏)

 中国が前のめりであることは、デザイン専門の国営媒体「芸術与設計雑誌社」の記事からも窺える。同媒体では「ふなっしー」や「くまモン」を例に挙げながら、このように言及している。

「大切なのは単純でありながら脱力系のイメージで、大衆に受容されやすい点である」

「’80~’90年代生まれのネット利用者や消費者の中心層に受け入れられるものでなければならない」

 また、「見た目が悪いことより最も恐れるべきことは、それが何の作用もしていないことである」と日本で不評な一部のゆるキャラにとって耳の痛い一文も。そして一つのキャラクターに対する持続性がなく、飽きられるのも早いのが中国IPの欠点であるが、国営通信の「新華網」では一つのキャラを需要に合わせて反復的、継続的に展開すべきと提案している。

 巨大市場と国策を背景に「ゆるキャラ覇権」獲得に動きだすか――今後も目が離せない。

【浦上早苗氏】 経済ジャーナリスト、法政大学IM研究科講師。新聞社勤務、中国留学を経て中国経済について各媒体で執筆を行う。著書『新型コロナvs中国14億人』(小学館新書)

【佐藤宗高氏】 Minto中国支社長、2022年4月よりインクルー共同代表。2017年から中国・上海を拠点に、日中のキャラクターを両国に展開するビジネスに従事している

<取材・文/青山大樹 安宿 緑 写真/時事通信社> 週刊SPA!編集部

提供・女子SPA!



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