主人公の行動に葛藤がなくカタルシスが得られない
さくらの不倫は、不倫そのものが問題なのではなくて、「逃げた先」がたまたま独身の金魚屋さんだったということ。
夫から春斗に逃げたわけではなく、夫から逃げられる場所ならどこでもよかったのだろう。たまたま春斗だった。たまたま春斗が金魚屋だった。そしてたまたま春斗がさくらに惹かれた。それをさくらが利用した。そんなふうにさえ見える展開なのだ。
カップル手つなぎ散歩なぜなら、「このままでは先に進めない」と思ったさくらが、離婚を決意したのはいいが、なぜか春斗に別れを告げて自宅に戻っていくからだ。離婚したら春斗と生きていきたいという思いが、さくらにはなかったように見える。最初から、春斗との関係においての「葛藤(かっとう)」がさくらからは感じられないのだ。ドラマとして、葛藤のないところにカタルシスはない。
DV夫に寄り添う、非現実的な展開
さらにわけがわからないのは、さくらは調停でDV夫・卓弥の「自分に自信がなかったから、常にひどいことを言ってしまった」という反省の弁(?)を本気で信じ、傾(かたむ)いたサロンを再建するために奔走するのである。
「さくらさんがいたから協力してきたんだけど(卓弥には協力したくないという意味合い)」
と言う取引先などを説得、さらに辞めたスタッフにも会って説得。それほどまでに暴力夫を更生させたかったのだろうか。だったら暴力をふるった時点で、何か別の対処はできなかったのだろうか。そもそもDV夫に寄り添うこと自体が非現実的である。
ふたりは結局、離婚するが、さくらも卓弥も「自分のサロン」を経営するようになる。この展開もよくわからない。さくらは自分でははさみを握れないのに、なぜそれほどサロンに執着したのだろうか。
【※以降、最終的なストーリー展開に触れています。これから楽しまれる予定の方はご注意ください】