【今週の一冊】

「近江商人の哲学『たねや』に学ぶ商いの基本」山本昌仁著、講談社現代新書、2018年

本との出会いというのは、まさに「ご縁」であると感じます。今回ご紹介する一冊も、そうしたふとしたきっかけから読んだものでした。

昨年末、高校ラグビーを観戦すべく大阪の花園へ。せっかくですので延泊して、かねてから見学したかった滋賀県豊郷町へ向かいました。そのことについては数週間前の書籍紹介で取り上げています:
https://www.hicareer.jp/inter/hiyoko/16853.html

この豊郷訪問以降、どうも私自身「滋賀県」を意識していたからなのか、興味深いことが続きました。

年が明けて間もなくのこと。某テレビ局でテニス関連の通訳業務を請け負いました。そのとき、差し入れでスタッフさんがくださったのが小袋に入ったバウムクーヘン。いつものごとく原材料名や会社名をチェックすべくパッケージをひっくり返すと、製造元に「滋賀県」とあったのです。

ちなみにそのテニス関連通訳は数日続いたのですが、合間に普段の放送通訳業務もあったため、どう考えても自宅に帰るのは無理でした。よって自分で新橋のビジネスホテルを予約。何とホテルのすぐ近くには近江牛のバルまでありました。何とも近江・滋賀県三昧となっていたのです。

さて、バウムクーヘンに話を戻しましょう。このバウムクーヘン、初めて見かけるメーカーでした。そこから気になりネットで調べたところ、「たねや」という和菓子店がヒットしました。滋賀県近江八幡市に広大な敷地を有し、そこで自然を生かした店舗展開をしているのです。その「たねやグループ」の現CEOが本書の著者、山本昌仁氏です。創業家の10代目にあたります。

もとは和菓子店からスタートしたお店ですが、斬新なアイデアを実施し続け、今では全国からこの「ラ コリーナ近江八幡」を訪れる人々が大勢います。なぜここまで成長できたのか、どのようにすれば顧客の心に響くのかを綴ったのが本書です。

近江商人といえば「三方よし」で知られます。売り手・買い手・地域への貢献です。たねやも正にそれを体現しており、その具体的な方法が本書には満載です。頁をめくると、新事業を打ち出す際の思い切りの必要性と共に、うまくいかない場合の引き際の見極めなど、大切なことがたくさん書かれています。失敗を引き延ばさず、常にチャレンジしていくマインドは、読んでいて非常に励まされます。

通訳の仕事も常に難しい課題に挑む連続です。そうした観点からとても大きな元気をもらえた一冊でした。

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