何でも教えてくれるけど妙に上から目線な先輩、お金に堅実だけど飲み会では1円単位まできっちり割り勘するドケチな同僚、リーダー気質なのに独りよがりで部下がついてこない上司……。一見「いい人」のはずなのに、なぜか嫌われてしまう人、あなたの周りにもいませんか?
そんな「いい人」に対してネガティブな感情を抱いてしまう自分は、なんて心が狭いのだろう……と自己嫌悪に陥ってしまう人もいるかもしれません。しかしそれは、決してあなたの性格が悪いわけではありません。
ヒトの生物学的な進化の観点から心理を解明する「進化心理学」を研究し、情報コミュニケーションの専門家でもある石川幹人(いしかわ・まさと)明治大学教授は、「本能で感じるいい人と、現代のいい人は違うから」だと言います。
結束力は強いけど仲間意識を強要しがちな「仲間意識さん」
<事例> 会社には○○大学出身が多く、卒業生の集まりである同門会がある。その大学出身者は半強制的に入るのが当たり前の社風になっている。
この前は「○○大OBとしてラグビー部を応援しましょう。来週の決勝戦のチケット確保しました!」とLINEグループに一斉送信が来た。正直、ラグビーは興味ないし、せっかくの休日にまで会社の人といたくない。だけど、断ったら結束力の強い「仲間意識さん」たちに何を言われるかわからない……どうしたらいいんだろう。
「似ている=親しい仲間」というわけではない
出身地や出身校が誰かと同じだと嬉しく感じるのは、類似した点が見つかることによって親近感が湧き、相手が仲間であると「誤認識」するためです。
狩猟・採集時代の仲間は、同じ場所で同じものを食べて同じ生活をする、血縁関係が近い人たちの集まりでした。ですから、互いに助け合うのは当然のこと。
この影響から、自分との類似点を誰かの中に見いだすことで、そうした近い関係の人を仲間であると感じるようにヒトは進化してきたのです。
しかし現実は、似たところがあるからといって、相手が狩猟・採集時代のような親しい仲間であるとは限りません。
そうした幻想を抱えたままでも、普段は大きな齟齬(そご)が生じることもなく仲良くやれますが、抜き差しならない状況になってくると問題が露呈します。