ギャグと「3分」時間制限との相性
――他にも印象に残ったネタはありますか?
「敗者復活で勝ち上がってきたYes!アキトさん。 賞レースでは、ショートコントやギャグの連発は、予選の点数が低くなってしまうことがあります。 決勝でも、審査員のみなさんが『ギャグは全部面白いけど、3分のネタとしてはどうか』といったようなことを仰ってました。
私には、準決勝の敗因がそのことかどうかはわかりません。 しかし、だからこその審査員ではない視聴者投票、敗者復活です! アキトさんは今回、敗者復活以外での決勝進出はありえなかったのではないでしょうか。 結果として、イチ視聴者としてたくさん笑わせてもらいましたし、こんな人が決勝にいてもいいじゃないかと改めて思いました。
ギャグ連発の評価が低くなってしまったり、コントに対して『展開が欲しかった』といった審査員のコメントがあったりしました。 それらはすべて『3分』というルールに起因するかと思われます。 ギャグはやはり数秒が適正の尺でしょうし、コントは3分だと展開するのは少し難しいかもしれません。 『おクチミッフィーちゃん、ほっぺたるろうに剣心』、最高じゃないですか!
賞レースはもちろん『誰が1番面白いか』を決めるわけですが、このR-1グランプリは、厳密に言えば『「3分で」誰が1番面白いか』なんです。 陸上競技で1500m1位の人が、100mやフルマラソンで負けてしまっても全然変ではありません。 しかし、この大会は言うなれば、いくら100mが速くても、1500mしかないんです。 3分というルールが悪いわけではなく、3分に向いている人、3分に合わせられる人が勝つのです。
逆に、ショートコントやギャグも得意なサツマカワさんは今回、それらを封印し、番組内でも仰っていたように3分に合わせてきました。そして、狙い通りに決勝進出に漕ぎ着けました」
さまざまな演出を取り入れるのが当たり前になりそう
――今年の決勝のネタ傾向として歌や音楽が入るものが多く、ネットでは“歌ネタ王決定戦ぽい”という声もありましたが、全体的なネタの潮流はどう見ましたか?
「R-1グランプリの予選は、フリップでネタをやる方が非常に多い印象です。 寺田寛明さんは紙のフリップでしたが、ZAZYさん・kento fukayaさんは、違う形を示してくれました。 また、BGM・SE・台詞音声なども、以前よりも自然に演出に入ってきています。
さまざまな演出が繰り出されるのは非常に楽しい反面、これからはそういったことがもっともっと当たり前になってきそうです。 PCで絵を描いたり、スマホで音声を録音・加工したりするのは誰でも簡単にできる時代です。 今後、それ自体が武器やオリジナリティにはなりにくくなると予想されます。
やはり芸人さんは、やはり面白い『おしゃべり』『演技』があって、そのうえで演出かなとも思います。