――なるほど。大きな笑いをヒットさせただけの成功要因があったんですね。

「もちろんこの手法を使っているのは、しんいちさんだけではありません。 今大会で言えば、サツマカワRPGさんの『大会近いもんな』。 直前の会話は普通のことを言っているのに(後半、普通じゃないことになっていきますが)、『大会近いもんな』に繋がっちゃうとなぜか面白い。 しんいちさんとは違う性質でありながら、『ここが笑うところですよ』と提示しています。

それから、しんいちさんのネタの途中で、照明が変わったのも非常に良かったです。 1本目のピストルクラブの解散発表と、2本目の四年生ズの漫才のくだり。 本人が希望したのか、スタッフがディレクションしたのかはわかりませんが…。 照明が変わっても不自然じゃないくだりでしたし、それが不自然じゃないということは、ネタが単調じゃなかった証拠と言えるのではないでしょうか?」

吉住の設定、金の国・渡辺渡部おにぎりのネタレベルに注目

――決選投票で落ちてしまった、吉住と金の国・渡辺渡部おにぎりはどうでしたか?

「吉住さんは、時代を反映している設定が素晴らしかったです。 この世のどこかにいるはずなんだけど、誰も見たことがない人があそこにいました。 また、そのデフォルメ具合がぶっ飛んでて最高でした。 『動画撮んな、飯食ってろ!』はテレビの前で大笑いしました。

渡部おにぎりさんは、今回唯一のコンビの芸人さんです。 以前までのR-1グランプリは、コンビの方が決勝に残ることも多かったのですが、去年・今年とコンビの方は苦戦しています。 去年はかが屋の賀屋さん1名。しかも、相方の加賀さんが活動休止中だったので、賀屋さんがピン芸人として活動している期間でした。 そして、今年はおにぎりさんのみ。

これは、去年から『芸歴10年以内』のルールになったことで、『ベテランのコンビ芸人』が参加できなくなり、芸歴の浅いうちは、生粋のピン芸人に軍配があがることが多くなったのではないでしょうか? この状況のなか、コンビで勝ち残ったということが、ネタのレベルが高い証拠です」