犬がお散歩する公園や散歩道にはダニがいっぱい。飼い主さんの服や靴について家の中に持ち込まれるケースも少なくありません。かつてマダニは蒸し暑い季節に繁殖するといわれていましたが、今は季節問わずに活動することがわかっており通年予防が不可欠です。

それでは、ダニはどんな時に寄生するのか、どんな予防策があるのか見ていきましょう。

1.犬に寄生するダニの種類

室内ダニや室外ダニなど、ダニは数えきれないほどの種類がいます。犬に寄生するのは主に4種類。それぞれの特徴をご紹介します。

■マダニ

体長3~10mm程の大型ダニで、吸血すると1~2cmにまで膨れ上がります。マダニに噛まれると、強いかゆみや痛みがあるほか、大量に吸血されると貧血を起こします。そして、高熱や嘔吐、食欲低下などを伴う「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症する場合も。SFTSは人に感染する恐れがあるため、仕事やアウトドアで野山に入った後はマダニがついていないかチェックして、家に持ち込まないようにしましょう。

■イヌセンコウヒゼンダニ

肉眼では見えない小型ダニで、皮膚にトンネルを掘って寄生します。「疥癬」を引き起こすと一気にかゆみは強まり、顔、耳、お腹、胸、肘、かかとなどが脱毛。かさぶたができ、黄色いフケが出ます。感染力が強く、人や他の動物にもうつるので注意が必要です。

■イヌミミヒゼンダニ

耳の中に寄生する小型ダニで、寄生すると強いかゆみを引き起こします。黒い耳垢が大量に出る、耳をかゆがる、頭をふる、耳が臭うなどの症状が特徴。寄生すると1回の駆虫では完治しません。卵から成ダニになるまで約3週間かかるため、2回目の駆虫を含めて1か月程の治療期間が必要です。

■ニキビダニ

人の皮膚にも存在するニキビダニ。健康な犬にも存在していますが、免疫力低下によって増殖して皮膚病を引き起こします。妊娠や長期の薬剤治療から併発するケースもあります。初期はかゆみが少ないものの、細菌の二次感染が起こると強いかゆみや脱毛が見られます。

2.犬のダニの感染経路は?

犬のダニ(マダニ)対策!ダニを見つけた時の対処法と予防法を獣医師が解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

「マダニ」は、公園、河川敷、野山、庭など草むらに隠れており、散歩やレジャー時に感染するのが一般的。飼い主さんの服や靴について室内に持ち込まれ、犬に感染する場合もあります。

「イヌセンコウヒゼンダニ」「イヌミミヒゼンダニ」は、ペットショップ、ドッグラン、散歩中など感染犬との接触で感染します。猫をはじめ他の動物から感染する場合がありますので注意が必要です。

「ニキビダニ」は母犬から感染するといわれています。人のニキビダニとは異なるため、人と犬の間で感染することはありません。

3.マダニによって感染する可能性のある感染症は?

代表的な感染症は下記の3つです。

■重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSウイルスに感染すると、原因不明の発熱、嘔吐、下痢のほか、白血球や血小板の減少が見られ、重症化すると命にかかわる危険性があります。人にうつる可能性がある「動物由来感染症」であり、2011年に中国で特定された後、2013年に日本で初めて死亡例が報告されました。ワクチンや有効な薬剤はなく、対症療法で治療します。吸血後6日~2週間程で発症するため、マダニを除去した後も注意しましょう。

■ライム症

不顕性感染と呼ばれ、感染しても症状が出ないケースがほとんどです。まれに発熱、食欲不振、複数の関節が腫れる多発性関節炎が見られます。「動物由来感染症」で、人の場合は風邪のような症状が見られた後、神経症状や関節炎などが出現するので注意が必要です。

■バベシア症

バベシア属原虫が犬の赤血球に感染すると、吐血性貧血が起こり、発熱や食欲不振、呼吸の乱れが見られます。ヘモグロビンが混ざった茶色い尿が出ることも特徴の1つ。有効な薬剤がなく、重症の場合は重度の貧血や黄疸、多臓器不全が見られ、命にかかわわる危険性があります。犬から人への感染は認められていませんが、他の動物から人に感染した事例があるため注意が必要です。