演じる上で大事にしたい“普通の感覚”
――オフの時間は、どう過ごしているんですか?
笠松:僕は基本的に趣味がないんですよ。健康のためによく自炊はしますけど。たまに贅沢して、スーパーでちょっといい野菜やお肉を買って、ご飯を作ったりもします。そういうことをしていると心が満たされますよね。あとは友だちや家族と電話したり筋トレしたり。そんな感じで過ごしています。本当に普通です。
――今回の主人公みたいな役柄を演じる際、そういう普通の生活の積み重ねのほうが大事になってくるものではないでしょうか?
笠松:普通の、と言うと漠然としていますが…普通の感覚は大事だと思っています。それを押さえていれば、あとは現場で調整ができるから。常にニュートラルでいることは心がけていて、それは大事だなと思いますね。
常に地に足をつけていたい
――“普通の感覚”とは、お芝居にとってどういうものですか?
笠松:そもそも普通の感覚を忘れてしまうと、お芝居ってできないと思うんですね。なぜなら自分のことが分かってないのに、演じる役のことをわかるわけがないんです。お芝居をするということは、常に地に足をつけていないとできないと思います。
――その姿勢が印象に残るお芝居につながるのではないでしょうか。今回の作品の主人公も、彼と同世代の若者の不安定な感じが表現されていると思いました。
笠松:物語の中で新しい価値観に触れていく草介は、ごく一般的な人間なんです。彼はある種、『リング・ワンダリング』に触れる観客の方々を代表するような役だと思いますね。監督はこのキャラクターに、動物性や野性味を求めていて。僕が動物的なのかどうかは自分では分からないのですが、自由な性質の人間ではあると思います。
――脚本についてはどう思いますか?
笠松:はじめは主人公の草介と、彼が出会う人々の物語だと思っていました。でも完成品を見たら、“草介と誰か”だけの話じゃなくて、もっと大きな対話や交流を描いている物語だなと感じました。それを最小限の登場人物で成立させているすごさが、この脚本にはあるんです。