「老後2000万円」というキャッチフレーズが大きな話題になったのは数年前のこと。平均寿命が延びる中、いかにして健やかに暮らし、金銭面での不自由なく天寿を全うするかは大きな課題と言えます。
そうしたことから私も投資について勉強し始めました。もっとも私自身、資産家ではありませんので、許容範囲で少しだけ手がけてみたのですね。幸い運用会社の担当スタッフさんが実に丁寧で助かりました。
先日のこと。そのスタッフさんから電話がありました。その会社が別件でマスコミに取り上げられたため、それに関するお詫びの連絡でした。
会社というのは一人一人の社員から成り立ちます。私の担当者さんが直接何かをしてしまったのでなくても、会社組織全体が新聞の見出しになってしまえば、それは社員全員をも表しかねません。それに関する謝罪や説明は、残りの組織メンバーにかかってしまうのです。実に大変な作業となります。電話口でお話を伺いながら、実に気の毒に思えました。
私自身、フリーランス通訳者としての年月が長くなりました。フリーと言うと一国の主のようなイメージを抱かれます。確かに社内独特の人間関係に心を砕く必要もありませんし、満員電車に揺られることもほぼ皆無です。自分でスケジュールを組めますので、オフピークに旅行や美術館を楽しむこともできます。空いている時間に病院、銀行、郵便局、市役所などの所用も済ませられます。大いに時間節約人生です。
でもだからと言って、完全に一匹狼(ちなみに英語ではmaverickと言います)でもないのですよね。国際会議では複数の通訳者と交代しながら訳出しますので、チームワークが大事になります。最近はZOOMを使ったセミナー通訳が多いですが、その場合、主催者側から仕事を請け負いますので、聴衆からすれば私たち通訳者は主催者の一員と見なされるでしょう。テレビの同時通訳の場合、局側からご依頼をいただきますので、視聴者から見ると通訳者はテレビ局側の人間ということになります。
つまり、万が一、通訳者が誤訳をしてしまえば、お客さまは「通訳者+クライアント全体」に対して「あれ?間違っているよね?」と思うことになるのです。通訳者が直接誤訳を訂正できなかった場合は、クライアントが誤訳についての釈明をせねばならないケースも出てきます。それだけに誤訳というのは本当に怖いのです。