【プロフィール】
木村 瑞子Yoshiko Kimura
ファッション業界で幅広く活躍する中、通訳の仕事に興味を持ち、サイマルアカデミーで通訳のトレーニングを受ける。2016年に同時通訳科を卒業後、社内通訳者として第二のキャリアをスタートさせ、今年からフリーランス通訳者として活動中。
Q.1木村さんは最近派遣契約の社内通訳者からフリーランス通訳者になられたと伺いました。いつからフリーランスになることを視野に入れていたのでしょうか。
フリーランス通訳者になることは、サイマルの同時通訳科を卒業してから考えていました。しかし社内通訳者として経験を積んでからフリーランスになった方がいいとの周囲の意見もあり、卒業後すぐにフリーランスにならず、社内通訳者として4~5年ほど経験を積みました。また並行してフリーランスの案件を受け、ある程度基盤ができ、フリーランスになっても仕事を続けていけると自信がついてきたタイミングでフリーランスになりました。
Q.2では、フリーランス通訳者に転向する以前のお話も聞かせて下さい。派遣契約の社内通訳者としてご活躍される以前は、正社員の雇用形態で通訳者として勤務をされていましたね。正社員から派遣社員になることへ不安はありましたか。世間的には派遣社員は不安定な印象もあるかと思います。
社内通訳者としての経験が全くない中で派遣社員になっていたら、うまくやっていけるのか不安があったかもしれません。しかし私は正社員で勤務していたファッションブランドで、社内通訳者として2年ほど経験を積むことができました。そこで「通訳者として仕事をしていくことができる」とある程度自信を付けることができたため、契約形態が派遣に変わることに対する不安はありませんでした。また派遣社員として勤務をした会社が生命保険会社で、事業目的や企業としての基盤がしっかりとしていたため、不安はありませんでした。
Q.3専任の社内通訳者になる以前から、別の担当業務がありつつも通訳も業務の一環として対応されていましたよね。その時点で既に通訳経験は豊富だったかと思います。専任の「社内通訳者」として経験をしなくとも、そのまますぐにフリーランス通訳者になることは考えていませんでしたか。
長年勤めていたファッションブランドでは、社内通訳者になる以前から、必要に応じて様々な会議やアテンド通訳に対応していました。社内の方からは感謝もされていましたが、それは「通訳者」としての評価ではなく、英語のできる社員としての評価です。私自身も通訳学校で習ったことが実践できて嬉しいという感覚でしたので、フリーランス通訳者になるための経験としては到底及びません。
そのあと同じ企業で社内通訳者として経験が積めたことも自信になりましたが、通訳スキルだけで私を評価し、受け入れてくださったのは、派遣で勤めた生命保険会社が初めてです。全く未経験の業界で勤務開始当初は苦労しましたが、満足のいくパフォーマンスができるようになり、お客様からも良いフィードバックを頂くことができた経験はより自信になりました。資料に書かれていない内容を通訳する咄嗟の対応力や、大勢の方の前で通訳をするなど、精神面でも鍛えられたのは社内通訳者を経験したからこそで、すぐにフリーランスにならず良かったと思います。
Q.4フリーランス通訳者になる前に「経験しておけばよかった」と思うことはありますか。
幸いにも思い残すことはありません。社内通訳者として最後に勤めていた生命保険会社では、テンナインのコーディネーターが「フリーランス通訳者になりたい」という私の希望をお客様に上手く伝えて下さいました。そのお陰で、後任の育成にも協力をさせて頂き、生命保険会社の仕事を優先することを前提としながら、タイミングを見てフリーランスのお仕事を少しずつ受けさせて頂きました。実績を作りながら次第にフリーランスに移行することができことは、かなり特殊な状況であったと思いますが、私の希望をかなえて下さったお客様とテンナインのコーディネーターには大変感謝しています。
Q.5フリーランス通訳者になって大変だと感じることはありますか。
やはり準備がとても大変です。私はまだフリーランスとして働き始めて間もないため、通訳者として対応をしたことのない業界が多く、まずはその業界についての基礎知識から勉強をする必要があります。そのあとに頂いた資料を解読するため、準備の時間を加味してスケジュールを組まないとパフォーマンスに支障が出てしまいます。しばらくはスケジュールに余裕を持ち、しっかりと準備をした上で当日に臨み、着実に実績を積んでいくことに重きを置いています。準備のための勉強は非常に時間が掛り大変ですが、今が頑張り時なのかもしれません。
Q.6今まで経験した中で、最も大変だったお仕事はありますか。
総合化学メーカーでの通訳は非常に大変でした。ホームページを見ても、石油や繊維素材、医療や農業など、非常に幅広い業界と関りがあり、かつ専門的な技術内容も含まれます。その企業にて、専門家の方を交えた社内会議の通訳をした際は、資料も多く事前準備の段階から心が折れそうになるほど大変でした。また現場でも普段聞きなれない専門的な内容の話が続いたため、訳出しに苦労しました。