同じ世代の人がどのくらいの年収をもらっているのか知りたい時に目安とするのが平均年収です。データの数値を表す単位としてよく使われるのが平均値ですが、一方で「中央値」という単位も使われることがあります。よく似た言葉ですが、どこに違いがあるのでしょうか。今回は平均年収と年収の中央値の違いと、年齢や学歴別で年収の中央値を比較してみます。

平均年収と年収の中央値の違いとは?

(写真=PIXTA)

平均年収と年収の中央値の違いはどこにあるのでしょうか。平均値は身長のように一番小さい値と一番大きい値の差が大きくないデータに用いるのには効果的ですが、データに大きなばらつきがある場合は、利用するに注意が必要です。

例えば、年収が 200万、250万、300万、400万、2億円という5人の平均年収を考える場合、平均値は4,230万円となり、年収が非常に高い人が混ざってしまうことで、実態とかけ離れた数字が出てしまいます。

このようなデータの場合は、低い方(あるいは高い方)から数えて全体の2分の1番目に該当するデータである中央値を利用することがあります。この年収の例では、中央値である300万がより実態に近いと言えます。

日本の世帯年収の中央値は?

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引用元:平成30年国民生活基礎調査 図9 所得金額階級別世帯数の相対度数分布

厚生労働省の平成30年(2018年)国民生活基礎調査によると、平均所得は551万6,000円、中央値は423万円となっています。平均所得は1世帯当たりの総所得で、中央値は所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値である金額を使っています。(※)

上記の「所得金額階級別世帯数の相対度数分布」の表を見ても分かるように、国民の所得には偏りがあるため、中央値の方が平均所得金額よりも現実的な数値を表しているといえるのではないでしょうか。

※「平均所得は、世帯人数1人当たり平均所得の額で、1世帯当たり総所得を世帯人数で除した平均値を使用しています。」としておりましたが、正しくは「平均所得は1世帯当たり総所得」のことでした。お詫びして訂正致します。(2020年2月20日10:00訂正)

自分の市場価値や転職を考えるときに中央値が参考になる理由

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所得などの各種データは一般的には偏りがあります。そのため、平均値だけでは掴みにくいリアルな数値を中央値で感じ取ることができます。自分の市場価値を知るために他の人の収入のデータと比較する場合は、平均値よりも中央値が参考になります。

女性の年齢別賃金の中央値は?

(写真=PIXTA)

女性の年齢別賃金を、同じく平成30年国民生活基礎調査のデータをもとに下記の表にまとめました。この表は49歳から70歳以降までの女性の賃金を5歳刻みで年齢別に表示したものです。全年齢の中央値(中位数)の賃金は22万6,100円で、平均値は24万7,500円でした。

データの全年齢で、中央値(中位数)の賃金は、平均値を数千円~数万円の幅で下回っています。
 

年齢 19歳
~
20~
24歳
25~
29歳
30~
34歳
35~
39歳
40~
44歳
45~
49歳
50~
54歳
55~
59歳
60~
64歳
65~
69歳
70歳
中位数 (千円) 170.0 202.6 223.8 233.7 240.6 246.2 244.8 239.2 235.1 190.8 177.0 174.1
平均値(千円) 172.6 206.5 229.6 243.4 253.6 264.1 268.7 270.6 266.5 222.6 208.7 215.8

※千円単位
※平成30年国民生活基礎調査 第7表 賃金階級、性、年齢階級別労働者割合をもとに筆者作成
※中位数とは、低い方(あるいは高い方)から数えて全体の2分の1番目に該当する者の賃金を指す。中央値と同じ。

女性の学歴別賃金の中央値は?

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平成30年(2019年)国民生活基礎調査では、女性の学歴別賃金の状況をまとめています。そのデータによると、女性の学歴別賃金の中央値は、「大学・大学院卒」が最も高く、「高専・短大」「高校卒」の順になることがわかりました。また、「大学・大学院卒」では、賃金の金額の差が他の学歴に比べて大きく、賃金の個人差が大きいのが特徴です。

「大学・大学院卒」ほどではありませんが「高専・短大」「高校卒」でも、賃金の差が発生しています。個人のスキルや経験、働き方に対する考え方の違いが、賃金の差に表れていると考えられます。

中央値を見て年収を増やしたいと感じたら

(写真=PIXTA)

平均値だけでなく中間値を見ることで、中間的な金額がよりリアルに分かります。各種の中間値のデータを見て年収を増やしたいと感じたら、自分のスキルと経験、能力の棚卸を行い、自分自身の現在の市場価値を探ってみるのも良いでしょう。その先の選択肢として転職もひとつの解決策になるのではないでしょうか。

文・小塚信夫(ビジネスライター・ファイナンシャルプランナー)

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